koukin Film of the Month

63. 『トロールズ ミュージック☆パワー』 ウォルト ドーン / USA 2020
"Trolls World Tour" Walt Dohrn / USA 2020 [2020.11 up]
音楽が盗まれた?!
トロール王国の"ハッピー"を取り戻すため
キラふわトロールたちの壮大な冒険がはじまる!
歌って踊ってハグして、毎日ハッピーに暮らすポップ村のトロールたち。
ある日、ポップ村の女王ポピーのもとに、ロック村の女王バーブからの手紙が届く。
ポピーたちはこの世界に別の仲間たちがいることを知って大興奮!
テクノ村、クラシック村、カントリー村、ファンク村、そしてロック村。
そこは個性豊かな村が集まる1つの王国だったのだ。
期待を胸に旅に出るポピーたち。
でもそれは、すべての音楽をうばい、王国をロックで
支配しようとするバーブのワナだった――。
いま、世界中のハッピーを取り戻すため、
ゆかいな仲間たちの壮大なアドベンチャーが」始まる!
(チラシより)
 この国では、口琴はカントリー村の住人の楽器。カントリー村の女村長デルタ ドーンの豊かな髪の毛の中に住んでいる(?)女の子(?)が演奏します<直川礼緒>
ドリームワークス 映画公式サイト https://gaga.ne.jp/trolls/

これまでの口琴映画
1. 『ゴッドファーザー Part III』 フランシス フォード コッポラ / USA 1990
"The Godfather Part III" Francis Ford Coppola / USA 1990 [2007.1 up][2009.2 追記]
映画史上、最高の大河作品の第三部。コルレオーネ三部作の最終章では、アル・パチーノが強力な力を誇るファミリーのドン、マイケル・コルレオーネ役に再度挑んだ。60代になったマイケルにとって、気がかりは二つあった。それは、一家を犯罪ビジネスから解き放つこと、そして適切な継承者を見つけることだった。継承者の候補として上がったのは、血の気の多いビンセント(アンディ・ガルシア)だった…しかし、彼の存在は合法的なビジネスを目指すマイケルの願いを、マフィアの血と暴力の抗争へと導きかねなかった。…(DVDジャケット裏より)
 この超有名な作品に、口琴が登場するシーンはいくつかある。 中でも重要な(?)演奏シーンは、シチリア島でのパーティの場面で、太目の人物が、民族楽器のアンサンブルを伴奏に口琴演奏を披露する。
 また、表面は友好を装いつつ、マイケル追い落としを画策する老獪なドン アルトベロ(イーライ・ウォラック)が登場するシーンでは、口琴の音が象徴的に響く(映像はなし)。
 さらに、冒頭のマイケルのアメリカ(NY?)の自宅での叙勲祝賀パーティのシーンでは、ドン アルトベロに口琴を弾いてみせる人物が一瞬登場する。ドン アルトベロともう一人の人物は、自分の歯を指差しながら、「わしゃもう大分前から…」というような、歯の話(?)をしている様子。残念ながらこちらは音はなし、と思っていたら、先日(2009年2月)のNHKBSでの3部作連日放映では、ちゃんと口琴の音がしているではないか!? あわててDVDを確認すると、日本語吹き替え版では音はなしだが、英語版では確かに口琴の音が聞こえる。ご用心。どのような意図があって日本語版で口琴の音を消したのか?謎だ。
 Part IとIIで口琴が登場するかどうか、一応目を皿にして見てみたが、どうも登場しないようだ。もしご存知の方、いらっしゃいましたら是非ご連絡を。<直川礼緒>
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン J1 110431

2. 『黒猫・白猫』 エミール クストリッツァ / ユーゴスラヴィア 1998
"Black Cat, White Cat"Emir Kustrica / Yugoslavia 1998 [2007.2 up]
マトゥコは間抜けな密輸商。そんな彼が計画した、起死回生の石油列車20両の強奪。だが父親に見限られたマトゥコには資金がない。そこで父の親友ゴッドファーザーグルガに「父親が死んだ」と嘘をつき援助を取り付ける。さてマトゥコの前に現われるのは、幸運の白猫か不運の黒猫か?
美しいドナウ川を背景にスリルとギャグの連打で爆笑を誘う、愛すべきヒューマン・コメディーの傑作!(DVDジャケット裏より)
 ゴッドファーザー繋がり、ということで今回は、1998年ヴェネチア映画祭銀獅子賞最優秀監督賞受賞の「白猫・黒猫」。 シリアスなイタリア系アメリカ マフィアに比べて、ユーゴのマフィアはやたら陽気だ。何せ、無理やり仕組まれた結婚式当日に、二人の老人(花婿の祖父とその親友「ゴッドファーザー」グルガ)が相次いで死に、ドタバタの末二人とも生き返るのだから。お互いに結婚する意志の全くない花嫁と花婿は、それぞれ理想の相手をみつけて即ゴールイン、新しい門出へ。一方悪党(花嫁の兄)は肥溜めに落ちる…。これぞハッピーエンドである。
 口琴を演奏するのは、マトゥコの息子、花婿に仕立てられることになる17歳のザーレ(フロリアン アイディーニ)。演奏場面は二箇所。父マトゥコが「ゴッドファーザー」の屋敷に援助の申し込みに行くときに同行し、暇つぶしに弾く。もう一場面、気になる女の子イダの店に出かけ、ジュースを注文しながら鳴らす。イダは口琴には全く興味を示さず、テレビを見ながら踊りまくっている(一応ザーレ本人には興味を示す)。
 他に、No SmokingなるバンドによるBGMで、10箇所以上、口琴が鳴り響く、口琴度の高い映画だ。<直川礼緒>
日本ビクター JVBF 39005

3. 『あした』 大林 宣彦 / 日本 1995
"Ashita (Tomorrow)" Obayashi Nobuhiko / Japan 1995 [2007.3 up]
ひとは、約束する。
出逢うために、
共に生きるために。
そして、ときには、
「さようなら」を言うために……

事故で遭難した小型客船、呼子丸。そこに乗船していた人々より、来る筈のないメッセージが、遭難した家族、恋人らのもとへ届く。“今夜12時、呼子浜にいる”。たとえ嘘でもいい。それぞれが、それぞれの思いを胸に、奇跡を信じて海岸へと集まってきた。やがて運命の時を迎えた彼らが目にしたものは…。
名作『ふたり』で、改めてその実力を見せつけた大林宣彦監督と原作・赤川次郎が再びタッグを組んだ、新・尾道三部作の第二作。出演は『青春デンデケデケデケ』でフレッシュな演技を魅せた高橋かおりと林泰文をはじめ、宝生舞、柏原収史、朱門みず穂、椎名ルミなどの若手俳優たちが作品を瑞々しく彩っている。永遠のノスタルジック・タウン=尾道やその近隣の島々が舞台となり、呼子浜に運命の糸によって集まっていく様々な“あした”を胸に抱く人々を、感動の群像ドラマとして描いた、このうえない愛の物語。(DVDジャケット裏より)
 「死者再生」つながり、ということで今回は、大林宣彦監督作品、新・尾道三部作の第二作、「あした」。チンピラてつ(田口トモロヲ)が持つ「外国の楽器」が、何故か口琴というわけだ。
 海辺のゆったりとしたシーンで、兄貴分(岸辺一徳)と会話を交わしながら、インド口琴を演奏したり、歯の痛む兄貴を尻目に海を見ながら早弾きを披露するなど、破滅的なキャラクターをよく表現している。口琴演奏・指導は直川礼緒。
 加えて親分を演じる植木等(2007年3月27日没。ご冥福をお祈りする。)は、「ハイそれまでョ」「ホンダラ行進曲」など、口琴を多用した青島幸男作品で、口琴界では知られた存在。これまた口琴に縁の深いキャスティングだ。<直川礼緒>
パイオニア PIBD-1037

4. 『いまを生きる』 ピーター ウィアー / USA 1989
"Dead Poets Society" Peter Weir / USA 1989 [2007.4 up]
厳格な名門校に自由の風を吹きこんだ1人の教師。生徒たちは彼を“キャプテン(船長)”と呼んだ……。
1959年バーモントの秋。名門校ウェルトン・アカデミーに1人の新任教師がやって来た。同校のOBでもあるというジョン・キーティング(ロビン・ウィリアムズ)だ。伝統と規律に縛られた生活を送る生徒たちに、キーティングは型破りな授業を行う。「先入観にとらわれず自分の感性を信じ、自分自身の声を見つけろ」とキーティングは、若者たちに潜在する可能性を喚起する。風変わりな授業に最初はとまどっていた生徒たちも、次第に目を開かされ、キーティングへの関心は高まってゆく。中でも7人の生徒たちはキーティングの資料をもとに、“死せる詩人の会”を結成し、深夜に寮を抜け出して洞窟に集まり、自らを自由に語り合うようになる。恋をする者、芝居に目覚める者……。
皆がそれぞれの道を歩みはじめたかのようにみえた時、ある事件が起こった。そしてその事件をきっかけに、生徒たちは再び学校体制下に引き戻されそうになるのだが……。

‘89年度アカデミー賞R最優秀』オリジナル脚本賞(トム・シュルマン)に輝く感動の超話題作。(DVDジャケット裏より)
 またまた「死者」つながり、としておこう。
 口琴シーンはただ1箇所、「死せる詩人の会」のメンバーが、夜中に洞窟に集まって詩を読む。「たちまちコンゴは大混乱」というラップ調(?)の詩に皆のりのり。空き缶を叩き、輪になって行進しはじめる。中の一人が、やおら口琴を取り出し、演奏しながら列に。演奏は、背の高いピッツ(ジェームス ウォーターストン)ではないかと思われるが、暗闇の中、はっきりしない。ご存知の方、どうか情報を。口琴を取り出す部分が間近に見えるが、口琴の取り扱い方はかなり手馴れた感じ。演奏自体は本人かどうか不明だが、趣旨を理解して上手。
 それから、この映画は、喉歌映画でもあった。数箇所で倍音唱法がうい〜んと響く。クレジットをよく見ると、デイヴィッド ハイクスの名が。<直川礼緒>
ブエナ ビスタ ホーム エンターテイメント VWDS3164

5. 『ホワイトファング』 ランダル クレイザー / USA 1991
"White Fang" Randal Kleiser / USA 1991 [2007.7 up]
少年は友と出会った。狼は優しさと出会った。
母と死別した少年ジャックは、父を訪ねてゴールドラッシュにわくアラスカへとやってきた。だが、そこで少年は父の死を知る。父の遺した金鉱を探すため、大自然の猛威と闘いながら過酷な旅を続ける中、少年はヒグマに襲われるという事件に見舞われる。その時ジャックの前に現れ、勇敢にも彼を救い出したのは、狼と犬の血が流れるホワイトドッグだった。ホワイトドッグに友情のめばえを感じるジャック。だが、再び出会った時ホワイトドッグは人間を憎むことを教えられ、怒りにみちた荒々しい闘犬にと変わっていたのだった……。
アラスカの美しく、きびしい大自然を舞台にそこで生きぬく少年の勇気と力強さ、そして動物との心のふれあいを描く、感動のアクション・アドベンチャー。
主演は「いまを生きる」のイーサン・ホーク。(DVDジャケット裏より)
 ジャック ロンドンの「白い牙」のディズニー版。今回はイーサン ホークつながり。「いまを生きる」同様、口琴を演奏するのはイーサン ホークではない。
 亡き父の友人、アレックス ラーソン(クラウス マリア ブランダウアー)が、1)旅の途中、焚火のそばで、2)悪漢三人組に小屋を襲われている最中に、余裕を見せるために、演奏する。特に2)では、襲っている悪漢の一人が、曲を認識し、「山のこだまだぜ」とうれしそう。(おかげでリーダー格に横面を張られる。)クラウス マリア ブランダウアー本人は、口琴の演奏は出来ないらしく、音は吹き替え、楽器の構え方も、不自然(その分、楽器ははっきりと見えるが…)。<直川礼緒>
ブエナ ビスタ ホーム エンターテイメント VWDS3354

6. 『牙吉』 原口 智生 / 日本 2003
"Kibakichi" Haraguchi Tomoo / Japan 2003 [2009.1 up]
────時に安政二年(1855)。
近江百井藩の寂れた宿場町に流れ着いた無宿浪人、人狼・牙吉(原田龍二)は、そこで賭博場を取り仕切る鬼蔵(清水健太郎)と出会う。鬼蔵家には、親に捨てられ孤児となった美しい娘・桔梗(安藤希)や、住処を追われた妖怪たちが人間に化けて暮らしていた。彼らは巧みに人間のならず者をおびき寄せては、その肉を喰らっていたのだ……。
(DVDジャケット裏より)
 今回は牙つながりで。
 妖怪たちの宴会場面。何故か妖怪たちはエスニック楽器好きだった!唯一、納得がいくのは、琵琶の妖怪「琵琶牧々」。あとは、ディジュリドゥ、東北タイの笙ケーンなど、ほとんどありえない設定。中に、ムックリを演奏しながら、うさぎ跳び(?)をする妖怪が一匹、画面を横切る(音は残念ながらなし)。いや、妖怪ではなく人間か?事情通のN.A.氏によれば、「妖怪名は『魍魎』。人間の姿になってる時は『六助』というそうです。役者さんは、本山 力さんという人です。」とのこと。う〜ん深い。<直川礼緒>
GPミュージアムソフト DMSM-5584

7. 『(ピラニア狩り)』 アンドレイ カヴン / ロシア 2006
"Okhota na piranyu" Andrei Kavun / Russia 2006 [2009.2 up]
特殊部隊「ピラニア」のエージェント、キリル マズール(ヴラヂーミル マシュコーフ)は、パートナーのオリガ(スヴェトラーナ アントーノヴァ)と、秘密最終兵器破壊の任務を帯びてシベリアのタイガへと向う。突然、彼らは文明に取り残された世界に放り込まれる。死をもたらす兵器は、プローホル(エヴゲーニイ ミローノフ)の配下のギャング団の手に落ちていた。 新しい「タイガの主」プローホル、彼の趣味は人間狩りであった。マズールは、自分の自動小銃を、手製の骨のナイフに持ち替える羽目になるとは、また、世界を救う替わりに、自分とパートナーの命を守らなければならなくなるとは、想像だにしなかった。一方、ハンターたちは、このサファリが、生ける標的にとってよりも、自分たちにとってこそ危険なものになるとは想像しなかった(DVDジャケット裏より)翻訳Nadya Popova>
 今回も牙(?)つながり。
 ロシアの「ランボー」マズールたちを追う人間狩りの一団。その案内人、シベリアの先住民「エヴェンク」が、野営地の焚き火のそばで口琴を奏で、喉歌をうたう。演じるのは、アルタイ共和国の喉歌唱者、ボロット バイルィシェフ。演奏場面のほかにも、BGMでアルタイの喉歌カイが随所で聞かれる。ボロットのファンにはたまらない映画だ(ストーリイはともかく)。
 来日したときにボロット本人に聞いた話では、最後の工場での闘いの場面で、高いところから落ちて上手に死んだのに、その場面が本編ではカットされてしまった、といって嘆いていた。
 なお、主役のマズールを演じるヴラヂーミル マシュコーフ(ウラジミール・マシュコフ)は、2001年の米映画「エネミー・ライン」で、青ジャージのセルビア人追跡者サシャを演じている。<直川礼緒>
CDLAND, no number

8. 『スヌーピーの大冒険』 ビル メレンデス / USA 1972
"Snoopy, Come Home" Bill Melendez / USA 1972 [2009.3 up]
スヌーピーとその仲間たちが贈る、楽しくて感動的な冒険物語!!
スヌーピーは、最近ちょっとご機嫌ナナメ。
どこに行っても「犬はお断り!」の看板に出くわしちゃうから。
でもそんな時、以前の飼い主ライラから一通の手紙が舞い込んだ。
「私、入院中なの。寂しいから会いに来てね。ライラより」
それを読んだスヌーピーは、チャーリーには何も言わずに、病院めざして旅に出た…。
スヌーピー&おなじみの仲間が繰り広げる、友情と冒険の物語がたっぷり詰まった劇場映画版!! アメリカの漫画家チャールズ・シュルツ氏が自分の愛犬をモデルにして、1950年に誕生したスヌーピーは、時代を超え、世代を越え、今なお人々を魅了し続けている「永遠のアイドル」なのだ!!(DVDジャケット裏より)
 今回は、焚き火つながり。
 ウッドストックと一緒に、チャーリー・ブラウンの家を飛び出したスヌーピー。日も暮れかかり、焚き木をあつめて晩御飯の準備。鍋を火にかけ、ステップを踏みながら楽しそうだ。ウッドストックの吹く口笛にあわせ、皿をスプーンで叩いたり、皿に張ったゴム(?)を弾いたり、芸達者なスヌーピー。最後には灰色の口琴を取り出して演奏する。人も犬も、焚き火のそばでは口琴を演奏したくなるものらしい。<直川礼緒>
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン PDA-265

9. 『フリッパー』 アラン シャピロ / USA 1996
"Flipper" Alan Shapiro / USA 1996 [2009.5 up]
ぬけるような青空、美しい海
少年が出会った大事な友達
それはイルカの “フリッパー”

両親の離婚によって、フロリダの小島で、一夏を過ごすことになった14歳の少年サンディ(イライジャ・ウッド)。島に住む変わり者の叔父ポーター(ポール・ホーガン)との共同生活が始まるが、ある日船着き場で、一頭のイルカに遭遇。人懐っこいこのイルカを“フリッパー”と名付けたサンディは、いつしか心を通わせていく。だが、この島ではイルカを飼うことを禁じられていた。大人たちは、嫌がるサンディから、フリッパーを引き離してしまう。あきらめきれない彼は、その夜フリッパーを探しにボートで海へ。そこで彼は偶然、何かを海に投棄する不審な船を目撃する。翌日浜辺でぐったりしているフリッパーを見つけるが…。
往年のTVドラマ「わんぱくフリッパー」を「ロード・オブ・ザ・リング」のイライジャ・ウッド主演で映画化した、心温まるファミリー・ムービー。当時15歳のウッドが、イルカと友情を育む少年をみずみずしく好演している。変わり者だが、心の優しい叔父に「クロコダイル・ダンディー」のポール・ホーガン。訓練されたバンドウイルカと、精巧なロボットを使い分けることで実現した、表情豊かなイルカのキャラクターも魅力的だ。(DVDジャケット裏より)
 今回は、「人間以外の生物との友情」つながりで。
 口琴の登場する場面は2箇所。
 ある日サンディが海辺に出てみると、フリッパーに口琴を弾いて聞かせている少女がいる。
  サンディ「僕のイルカ 気に入った?」
  キム「あんたのイルカなの?」
  サンディ「そうさ 僕がみつけた」
  キム「名前は?」
  サンディ「ええと フリッパー」

 しばらく会話を交わす二人。その間中キムは、口琴を左手に持ち、ときどき演奏する。
  サンディ「何してたの?」
  キム「催眠術よ イルカは音楽が好きなの」
  サンディ「できっこないさ」…

 口琴でイルカに催眠術をかけられるかどうかは不明(是非実験して欲しいものだ)だが、口琴が淡い恋心の橋渡しとなるのは確かなようだ。

 もう一箇所は、海に出て、悪人ダーク モランの捨てた廃棄物を探す(フリッパーに探させる)サンディたち。成果もなく探し疲れたキム、甲板で口琴を弾く。
  サンディ「これでもう隅々まで探したよ」
  キム「明日また探したほうがいいわ」

 そこへ、何かを見つけたフリッパー。キムも演奏を中断する。

 海と口琴。そういえば、「あした」のチンピラてつも、海を見ながら口琴を演奏していたっけ。ところでTVドラマ版「わんぱくフリッパー」で口琴シーンがあったかどうかご存知の方、ご連絡を。<直川礼緒>
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン UNKA-25260

10. 『おもいでの夏』 ロバート マリガン / USA 1971
"Summer of '42" Robert Mulligan / USA 1971 [2009.6 up]
美しい年上の女(ひと)との甘く切ない恋
少年のひと夏の体験を綴った青春ラブストーリー

1942年の夏。ニュー・イングランド沖合いの小さな島に、家族とバカンスにやって来た15歳の少年ハーミー。セックスへの興味が高まる多感な年頃のハーミーは、この島で暮らす美しい人妻ドロシーに強い憧れを抱くが……。『アラバマ物語』の名匠ロバート・マリガン監督が、少年のひと夏の体験を描いた切ないラブストーリー。アカデミー賞作曲賞受賞、ミシェル・ルグランの切ないメロディが心に残る名作。(DVDジャケット裏より)
 「ひと夏の経験」つながり。
 主人公ハーミーを含む、思春期の少年3人組自称「猛烈トリオ」のうち、メガネに帽子、一番内向的で幼い感じのベンジー(オリヴァー コナント)が、イングランド製のあまり質の良くない(見た目は立派な)口琴を演奏する。ズボンのポケットから取り出し、口に当てずに試し弾きする様子は、かなり手馴れたもの。(もう一人のオスキーは、ハーモニカを持ち歩いている。ハーミーは時々口笛を吹く。)
 3人が同じ役を演じる「続・おもいでの夏(Class of '44)」でもベンジーが口琴を演奏するかどうか、ご存知の方、ご連絡を。情報:KY <直川礼緒>
ワーナー・ホーム・ビデオ DL-01033

11. 『リオ・ロボ』 ハワード ホークス / USA 1970
"Rio Lobo" Howard Hawks / USA 1970 [2009.7 up]
“男の中の男、ジョン・ウェインが輝く
エキサイティングなエンタテインメント作品”

主演ジョン・ウェインが壮絶なアクションで魅せる群像劇ウエスタン。
ハワード・ホークス監督との22年間に渡るコンビでは、本作が5作目。いずれも大ヒットを記録したホークス監督にとっては遺作となった作品である。
 南北戦争末期、無法の町リオ・ロボ。北軍のマクナリー大佐(ジョン・ウェイン)の護衛する金塊輸送列車は南軍のコルドナ大尉(ホルヘ・リヴェロ)の率いるゲリラに襲われる。マクナリーは捕らわれるが、脱出。逆にコルドナと部下のタスカロラ(クリストファー・ミッチャム)を捕虜にする。しかし、この事件の背後には、北軍に裏切り者がいたことが発覚する。戦争が終わって偶然再会した3人は、共に列車襲撃事件に関わる裏切り者を追跡することになるのだった。(DVDジャケット裏より)
 「ジェニファー オニール」つながり(どちらの映画でも、残念ながらジェニファー オニールが口琴を演奏するわけではない)。
  保安官事務所(兼刑務所)をまんまと乗っ取るマクナリー大佐ら(もちろん保安官は悪漢だ)。息子を救出し、裏切り者ケチャムを牢に押し込め、気をよくしたタスカロラの父フィリップ(ジャック エラム)は、口琴を演奏する。音色を意識した音楽で、リズムも多岐に富み、なかなか面白い。が、大佐(ジョン ウェイン)はお気に召さない。
 マクナリー大佐「もっとうまく弾けんのか」
 フィリップ「弾けんから練習しとる」
  (大佐とタスカロラが話をしている間も弾き続けるフィリップ老人)
 マクナリー大佐「どうしたら それ やめてくれる」
 フィリップ「酒くれたら」
 マクナリー大佐「仕入れてこよう」

 別行動で助けを呼びに行ったコルドナ大尉が悪党一味に捕まる場面が入り、次のシーンとして、マクナリー大佐らが立てこもる保安官事務所に差し入れを持ってくる味方の歯科医ジョーンズ。サンドイッチにビール…。
 フィリップ「ビールだと?」
 マクナリー大佐「弾くのをやめんとやらんぞ」
 フィリップ(口琴をポケットにしまい)「やめる」

 ジャック エラム本人が演奏しているのかどうかは怪しいが、少なくともその手の動きにぴったりと合わせた演奏を録音した口琴奏者は、かなりの使い手と見える。<直川礼緒>
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン PHKA 108961

12. 『ロング・ライダーズ』 ウォルター ヒル / USA 1980
"The Long Riders" Walter Hill / USA 1980 [2009.8 up]
ウォルター・ヒル監督 屈指の傑作!
南北戦争後の西部を舞台にした
壮烈なバイオレンス…

1876年9月7日、ミネソタ州ノースフィールドの町。目抜き通りに一際目立つファースト・ナショナル銀行。あたりに用心深く目を配る男たちがいた。南北戦争後の荒野に、最強の強盗団 “ジェームズ&ヤンガー・ギャング”を組織し、西部七州を鬼人の如く荒らし回ったならず者たち。銀行、列車、駅馬車を襲うこと前後25回、奪った金額合計50万ドル、官憲から逃れること15年。彼らこそ西部史上もっとも恐れられ、そして愛された永遠のフォーク・ヒーローだった。
スローモーション撮影を駆使したウォルター・ヒルの壮烈なバイオレンス描写と、本作をきっかけに彼と長くコンビを組むこととなるライ・クーダーの音楽との絶妙なマッチ。劇中のアウトロー四兄弟を、実際の兄弟である四組の俳優が演じているのも大きな話題となった。(DVDジャケット裏より)
 列車強盗つながり。
 口琴の演奏シーンは、大きく2箇所。ひとつは、ジェシー ジェームズ(ジェームズ キーチ)とジーの結婚式のダンスパーティー。バンジョー奏者、フィドル奏者と、ギター奏者の間にはさまって、口琴を演奏する男。 この次の曲では、スプーンズのアップもあり。 3曲目、華麗なステップを踏む踊り手たちのバックに、同じ口琴奏者の姿が見える。バンドは、ギター、マンドリン、口琴、フィドル、バンジョー、スプーンズの6人編成であることが判明。(前のシーンでは姿の見えなかったマンドリン奏者が加わっている。)
 もうひとつは、ミネソタに向かう列車の中、ボブ ヤンガー(ロバート キャラダイン)が口琴を演奏。自分で弾いている可能性が高い。左利きである。そういえばこのボブ、両手に拳銃を持ち、左手で撃つ場面が多いようだ(回数は未確認)。しかし、ライフルは右手で引金を引いている。両利きか。曲はThe Girl I Left Behind Me。隣に座った兄のジム ヤンガー(キース キャラダイン)が口琴にあわせて歌う。
 「通りを歩いていたら 頭の上で声がする
 窓から女が顔を出し"誰か私を愛して"
 "牧師の父の教えで 処女を守ってきたの"
 今じゃ子供は12人 背中には赤ん坊」
 演奏を終わり、口琴を口からはずし、ふと考える表情のボブは、このあと銀行襲撃に失敗し、重傷を負う。
 このほか、探偵一味に殺された、ジェームズ家の15歳の頭の弱い少年アーチーの葬列の場面のバックにも口琴の入った曲が流れる(映像はなし)。音楽はライ クーダー。 <直川礼緒>
20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン GXBJ-15850

13. 『怒りの葡萄』 ジョン フォード / USA 1940
"The Grapes of Wrath" John Ford / USA 1940 [2009.9 up]
大地は乾き、人々は胸に“怒りの葡萄”を宿していた…。
巨匠ジョン・フォードが謳う不屈の人間賛歌!

不況の嵐に農場を追われた貧しい一家が、カリフォルニアの楽園を目指して旅立った。だが様々な困難を乗り越えて辿り着いた彼らが見たものは、溢れる農民と絶望的な生活だった…。
文豪スタインベックのピューリッツァー賞受賞作品を『荒野の決闘』『わが谷は緑なりき』の巨匠ジョン・フォードが映画化し、見事アカデミー賞監督賞を受賞したヒューマンな名作。政治の貧困や農民政策の不備にメスを入れながらも、フォードはその根底に、強い人間愛を持ち、虐げられた生活でなお逞しく生きる人々を力強く描き出してゆく。中でも名優ヘンリー・フォンダが見せる不屈の眼差しと家族を包みこむ優しい表情は美しく、その名演技は彼の代表作と呼ぶに相応しい。(DVDジャケット裏より)
 キャラダインつながり。「活動家」ケーシーを演じたジョン キャラダインは、「ロング・ライダーズ」でヤンガー兄弟を演じたキャラダイン兄弟の父。
 カリフォルニアの農務省直営農民小麦畑キャンプに辿り着いたトム ジョード(ヘンリー フォンダ)一家。貧農を人間扱いしてくれる初めてのキャンプだ。土曜夜のダンスパーティーで、バンドが、3曲演奏する。「彼女は山からやってくる」「赤い川の谷間」「藁の中の七面鳥」とお馴染みの曲だ。その1曲目「彼女は山からやってくる」の途中で、バンドのミュージシャン達を映すシーンがある。バンジョー、ベース、ギター、フィドル、マンドリン、口琴、タンバリン(?)、アコーディオンの各楽器。体を揺らし、一心不乱に、早弾きでメロディを奏でる口琴奏者。少なくとも、すぐ隣のフィドルの女性は、アフレコと思われる現実感がない演奏姿勢だが、この口琴は本人、または本人自身によるアフレコか?演奏シーンはここ1箇所のみだが、口琴は全3曲で聞かれ、どの曲でもメロディを演奏している。
 土地を失い、食べるものもないほどの貧乏な農民たちが、車だけは持っている、という点にアメリカの車社会の原点を見る思いが。<直川礼緒>
20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン FCS-1024

14. 『若き日のリンカン』 ジョン フォード / USA 1939
"Young Mr. Lincoln" John Ford / USA 1939 [2009.10 up]
名作「怒りの葡萄」の前年に、ジョン・フォード監督とヘンリー・フォンダのコンビで製作された第16代米国大統領リンカンの青春記。大統領になる以前に正義感あふれる弁護士として活躍していた時代の物語。独立記念日に起こった警官殺害事件で、犯人とされる人物の弁護を引き受けたリンカンは、犯人をリンチにかけようとする群集を説得し、不利な状況にもかかわらず公正な立場で責任を全うする。フォードの重厚な演出が好ましい法廷ドラマ。(DVDジャケット裏より)
 「ジョン フォード監督・ヘンリー フォンダ主演」つながり。
 口琴シーンはふたつ。
 1.ラバに乗り、毛皮帽にパイプの男と連れ立って川辺を行くリンカン。被告の家族を訪問するのだ。左手にずーっと持っていたらしい口琴を手に、試し弾きを2回。そのあと、口に当てて演奏を始める。

 男「なぜユダヤ琴(ジューズハープ)と?」
 リンカン「聖書でダビデが弾く」
 男「聖書はいいけど 
   変わった音楽の好みだよな」
しばらく演奏するリンカン
 男「何て曲?」
 リンカン「知らない」
「ディキシー」を演奏し始める。
 男「行進したくなる」
口笛でメロディーを合わせる男。

 2.翌日の公判を前に、オフィスで物思いに耽りながら、口琴を演奏するエイブ。曲は「藁の中の七面鳥」、早弾きのメロディ演奏だ。女が馬車で通りかかったとき、そして判事が話しに来たときの、計二回中断する。

 どちらのシーンも、音はピッタリとは合っていないが、それでもかなり合わせてあるところに努力が見られる。口琴を、口にあてずに試し弾きしたり(試し弾きで余韻の長いこんな音が出るのかは疑問だが…)、口に当てるしぐさや、リズムのとり方は、慣れた感じ。音は別人が出しているとしても、ヘンリー フォンダ自身も、かなり演奏できたのだろう。実際には、口琴はダビデの竪琴とは全く関係がなく、せっかくの薀蓄もいい加減なものだが。それにしても第16代アメリカ合衆国大統領エイブラハム リンカーン、本当に口琴を演奏したのだろうか?<直川礼緒>
大創産業 300-DVD-洋画-001

15. 『シシリーの黒い霧』 フランチェスコ ロージ / イタリア 1962
"Salvatore Giuliano" Francesco Rosi / Italy 1962 [2009.11 up]
フランチェスコ・ロージ監督のネオ・リアリズムの問題作!
黒か?白か?真実はどこに?世界をゆるがした暗黒結社マフィアの姿なき恐怖!
誰が何のために、彼を殺したのか?いまだ未解決の殺人事件に迫る異色作!

1950年のある日、シシリー島の小さな村で一人の男が殺された。彼こそ、誰もが探していた独立義勇軍の闘士、サルバドーレ・ジュリアーノだった。彼を利用し、冷酷にも殺したのはいったい誰なのか?重要な証人も裁判の前に何者かに殺されてしまう。激動の歴史の中でうごめくマフィア組織と警察の不気味な黒い影。ニュース・フィルムのような演出で真実に肉迫する。(DVDジャケット裏より)
 「裁判」つながり。
 音のみ流れるシーンはいくつかあるが、口琴演奏シーンはひとつ。
 夜、街角にたむろする無言の男たち。中の一人が、手すりに腰かけ、マランザーヌを演奏している。ドアが開き、何人かの男たちが出てくる。合図の口笛、そして銃撃!
 シチリア独立運動の英雄、山賊のサルヴァトーレ ジュリアーノの死で幕を開ける。女たちの泣き声、そして様々な場面で使われる合図の口笛が印象的。実際には全く無関係の、マフィアと口琴を関連付けたのは、この映画が最初らしい。
 ところで、銃撃される側の男たちが出てくるドアの上の看板に書かれている、CCRRとは何の団体(の略)なのか、ご存知の方、教えてください。<直川礼緒>
ウエストブリッジ WBOC1007

16. 『ダヤヴァン』 フェローズ カーン / インド 1988
"Dayavan" Feroz Khan / India 1988 [2009.12 up]
真実は力なり。(DVDジャケットより)

警官に父を殺され、孤児となったシャクティは、シャンカルという少年と知り合い、スラムに住む親切なイスラム教徒カリム ババのもとで少年時代を過ごす。大人になったシャクティは、アル中で女好きの警部ラタン シンの残虐行為をまたもや目にする。カリム ババが捕らえられ、牢の中で首吊り死体となって発見されたとき、シャクティは公衆の面前で敵を討つ。捜査が開始されたが、誰一人証人となるものは名乗り出なかった。こうしてシャクティは、心の広いドン、ダヤヴァンと呼ばれることになる。娼婦ネールと結婚して二人の子どもを儲けたダヤヴァンは、ボンベイを地盤として益々力を増していく。それは同時に、破滅への道でもあった…。
 警官殺しにはじまり、地元のボス(民衆の味方)へ。信頼していたものに裏切られて惨殺される。シチリアと南インドと、場所は違っても話の流れは同じだ。
 例のごとくストーリイとはあまり関係なく(?)踊りだす群集に囲まれ、街を歩く「民衆の味方」ダヤヴァンことシャクティ(ヴィノード カンナー)とその妻ネール(マードゥーリー ディークシト)。群衆の先頭に立つ、少年時代からの親友であり義兄弟のシャンカル(フェローズ カーン)が、口琴を一瞬演奏する。実際には、演奏していないのは明らかだが、弁を弾く動きを大げさに、しかし的確に表現している。監督であり、主役級の大物が見せる口琴演技。情報:TA<直川礼緒>
Eagle Video  no number

17. 『ウィル・ペニー』 トム グリース / USA 1968
"Will Penny" Tom Gries / USA 1968 [2010.1 up]
ハリウッドの伝説的スター、チャールトン・ヘストンが演じるのは、すでに老境に入ったカウボーイ、ウィル・ペニー。運に見放され、仕事も金もないペニーは、冷酷な無法者たちとの争いで重傷を負う。死にかけていたペニーを手厚く看護したのが、若くて美しい女性、キャサリン(ジョーン・ハケット)。彼女は息子を連れて、西部にいる夫の元に向かう途中だった。
キャサリンの看護ですっかり回復したペニーは、それまで体験したことのなかった生活を味わうことになる。しかし彼は2つの問題にぶつかってしまう。1つは人妻を愛してしまった事、そして、もう1つは、あの無法者たちがペニーの息の根を止めるために舞い戻ってくる事だった。

"私がこれまでに出逢った脚本のなかで素晴らしい作品のひとつ。最高の西部劇" チャールトン・ヘストン(DVDジャケット裏より)
 ウィル ペニーに息子を殺され、復讐を誓う「無法者の毛皮商」クイント一家。キャサリンと息子のHGとが暮らす山小屋を襲い、ペニーを奴隷のようにこき使う。どんちゃん騒ぎ(クリスマス パーティー?)のある晩、クイント一家の息子たち、「利口で残忍」なレイフ(ブルース ダーン)の口琴と、「強いがトロい」ルーフ(ジーン ルーサーフォード)のハーモニカをバックに、父プリーチャー(ドナルド プレザンス)と娘が腕を組んで踊りまくる。
 途中で口琴奏者はプリーチャーに交代。レイフは、踊りながら、ハーモニカを口にくわえて、(手は使わずに)メロディーを演奏するという離れ技を披露する。
 レイフを演じるブルース ダーンは、1982年の『栄光の季節』でベルリン国際映画際で男優賞を受賞。一方のプリーチャー クイントを演じるドナルド プレザンスは、刑事コロンボ『別れのワイン』のエイドリアンをはじめ、『007は二度死ぬ』の悪の組織のボス、『ミクロの決死圏』の白血球に飲み込まれる学者など、悪役や狂人役で知られる名優だ。
 にしても、いざこざの発端となった事件では、プリーチャーの射止めたヘラジカを持ち去ろうとしたペニーの仲間二人の方が明らかに悪い。事情をよく理解しないまま銃撃戦に参加したペニーに息子を殺されたプリーチャーの復讐心も、しごく妥当なものだと思われるが、ペニーとその仲間はいいもん、クイント一家は悪いもんという設定に観客の心を誘導していく裏には、どのような秘密が仕込んであるのだろうか。<直川礼緒>
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン PDA-200

18. 『トム・ホーン』 ウィリアム ウィアード / USA 1980
"Tom Horn" William Wiard / USA 1980 [2010.3 up]
実在のガンマンに扮したマックイーン最後のウエスタン!

ジェロニモを捕虜にして一躍勇名を馳せた男、トム・ホーンがワイオミングにやってきた。ジョン・コーブルたち大牧場主に共同で雇われた彼は、期待通りに次々と牛泥棒を仕留めていく。ところが、残虐とも思えるその仕事ぶりに恐れを抱き始めた大牧場主たちは、司法執行官ジョー・ベルにその対策を持ちかけた。かねてよりトムに名声を奪われたことを妬んでいたジョーは、少年殺しの罪を彼にかぶせる。ついにトムは逮捕され……。

スティーブ・マックイーン主演。共演は『ストレイト・ストーリー』の名優リチャード・ファインズワース。アリゾナ州にオール・ロケを敢行。アメリカ大西部の匂いがスペクタクルに広がる本格ウエスタン!(DVDジャケット裏より)
 人名映画つながりで。
 大牧場主コーブルに雇われ、一緒にブラウンズホールに到着したトム(スティーブ マックイーン)。そこにたむろする牛泥棒たちは、フィドル2本、ギター、口琴各1本のバンド活動をしているミュージシャンでもあった。口琴奏者が率先して早速迷惑行為を開始、コーブルに踊りを強要する。コーブルの足元を撃って躍らせようとする、楽器よりも銃を得意とするらしい5人目の男は、結局トムに足を撃たれて倒れる。
 銃声にちょっとびくつく口琴奏者を演じているのは、「ブラウンズホールの牛泥棒」として4人一まとめでエンド クレジットに名前が出てくるうちの一人ではないかと思われるが、どの人なのかはっきりとはわからない。<直川礼緒>
ワーナー・ホーム・ビデオ DL-01042

19. 『火の馬』 セルゲイ パラジャーノフ / ソ連 1964
"Tini zabutikh predkiv (Shadows of Forgotten Ancestors)" Sergei Paradzhanov / USSR 1964 [2010.4 up]
異色の監督セルゲイ・パラジャーノフ(1924-1990)が国の内外で一躍注目された作品。パラジャーノフは旧ソ連、グルジア共和国出身。ウクライナの西カルパチア山地を舞台に、イワンコと二人の女性をめぐる悲恋物語が民族色豊かに展開する。もっとも、映画はドラマティックに組み立てられているのではなく、伝説や伝承を詩的に構成したようなゆるやかなスタイルを取っている。原作はウクライナの作家ミハイル・コチュビンスキーの「忘れられた祖先の影」、映画のロシア語原題も同じ。この映画にはいくつもの不慮の死が、あたかも自然の摂理であるかのように淡々と描かれており、冬の雪景色、つかのまの春の光、草刈りや収穫の野良仕事など、季節の変化と人生の推移とが分かちがたく結びつけられている。また、画面の美しさだけでなく、合唱や歌声、祈りの声、叫びや悲しみの声、種々の民族楽器の音色など、私達の耳へも物語世界を深く語りかけてくれる。岩本憲児(DVDジャケット裏より)
 馬つながり。
 口琴ドリンバの演奏シーンは4箇所。
 まずは、主人公イワンコの子ども時代、イワンコをかばって倒木の下敷きになって死んだ兄オレクサの葬式。教会の外で口琴を演奏する女たち。鈴や笛を売るものなどもいて、賑やかである。
 二つめは、恋人マリチカを失い、抜け殻のようになった青年イワンコ。新築の家を立てる仕事を請け負いながら、口琴を吹く。(字幕は「笛」と誤訳。語りは「ドリンバ」と言っている。)
 三つめは、子羊の生まれるシーンで、3人の男が合奏。
 そして最後は、「悪の力」と題された章の冒頭、イワンコと結婚したパラグナが、干草の上に横になって演奏。
 これらの口琴シーン以外にも、長いラッパのトレンビータ、喉声を発しながら演奏する縦笛、バグパイプなど、カルパチア山脈に住むフツール民族の楽器がたくさん登場する。<直川礼緒>
アイ・ヴィー・シー IVCF-26

20. 『許されざる者』 ジョン ヒューストン / USA 1959
"The Unforgiven" John Huston / USA 1959 [2010.11 up]
オードリー・ヘプバーン、バート・ランカスター主演、
巨匠ジョン・ヒューズ
(ママ)監督が贈るヒューマン・ウェスタンの傑作

西部開
(ママ)史上繰り返された開拓民(白人)とインディアンの間での殺戮と復讐。
許されざる者は開拓民なのかインディアンなのか…。

幼いときに両親を亡くしたレイチェル。彼女はテキサスの開拓民一家であるザカリー一家に引き取られ、美しく成長していた。しかし彼女に「白人の宿敵であるインディアンの血が流れている」という噂が広まり始めた。宿敵インディアンのカイオワ族に婚約者が惨殺される、という悲劇が起こった時、彼女は衝撃の事実を知ることになるのだった…。繰り返される戦いと復讐の中で、レイチェルは犠牲者なのか、それとも呪われた血を引く「許されざる者」なのか…。

オードリー・ヘプバーンが開拓の歴史に翻弄されながら、真の強さを持つ美しい女性を見事に演じきったウェスタンの傑作。オードリー演じるレイチェルが、実の兄を自らの手で撃たなければならない、悲しくも美しい表情がすばらしい。監督は「黄金」でオスカーを受賞のほか「女と男の名誉」等で数々の賞を受賞した巨匠ジョン・ヒューズ
(ママ)。西部開拓の歴史の背景にあった悲劇を見事な演出で描く。共演は西部劇の名俳優として名を残し、「エルマー・ガントリー」でオスカーを受賞したバート・ランカスター。心優しくレイチェルを守り、一家を守るためにカイオワ族に立ち向かう一家の長男を熱演している。(DVDジャケット裏より)
 禁断の愛つながり。
 隣(といっても15km離れている)のローリンズ一家を招待し、パーティを楽しむザカリー一家。レイチェルの出生の秘密に話が及び、場が気まずくなった瞬間、ザカリー家の母マチルダ(リリアン ギッシュ)が、無理矢理陽気に「藁の中の七面鳥」をピアノで弾きだす。ダンスを始める二組のカップル。演奏に加わるのが、ローリンズ家の次男(?)ジュード(アーノルド メリット)の口琴と、画面には登場しないハーモニカ奏者。口琴の方は、数秒間のアップあり。左利きで、親指で外に弾き、唇の形が妙にわざとらしい。
 後に、「白人の呪いの音楽」の源として、カイオワ族の総攻撃を一身に受け、ズタズタにされるピアノが無残である。基本的にアンチ ピアノ派である筆者でさえ、この扱いには憤りを禁じ得ない。
 ちなみに、ジョン ヒューズは、「ホーム アローン」や「101」の脚本・製作でも知られる監督(別人です)。<直川礼緒>
20世紀フォックス ホーム エンターテインメント ジャパン GXBA-16830

21. 『ロスト・チルドレン』 ジャン=ピエール ジュネ / フランス 1995
"La Cite des Enfants Perdus (The City of Lost Children)" Jean-Pierre Jeunet / France 1995 [2010.12 up]
夢の中まであなたを守ってあげたい…。
『デリカテッセン』のジャン=ピエール・ジュネとマルク・キャロのコンビが贈る
ファンタジー・エンターテインメントの傑作!

冷たい雨が降る暗黒都市。心優しい大道芸人の怪力男ワン(ロン・パールマン)は、一つ目教団に弟をさらわれてしまう。孤独な少女ミエット(ジュディット・ビッテ)は途方に暮れるワンと出会い、一緒に弟探しをすることになる。しかし、孤児院を経営するシャム双生児は、ワンの怪力に目をつけ悪用しようとする。
一方、海に浮かぶ要塞では、同じ顔をしたクローン人間たちがワンの弟の頭脳から夢を取り出そうとしていた。ミエットとワンは機雷に囲まれたクローン要塞へと向かう…。
斬新な美術、驚異的SFX映像などジュネ&キャロ監督が総制作費14億円をかけて、完成させた夢の世界。(DVDジャケット裏より)
 口琴の演奏シーンはなし、かといってBGMに口琴が使われているわけでもない、「今月の口琴映画スペシャル」その1。
 沖合に浮かぶ実験室に住む、老化速度が異様に早いクローン人間のボス、クランク(ダニエル・エミルフォルク)に出鱈目なお伽噺を聞かせる、兄のクローン人間たち(ドミニク・ピノン、6役、もとい7役)。その「お話」の中に、下記の一節が。
 「セイウチは鯨のひもで口琴を鳴らします。」
 ちなみに、筆者のお気に入りは、シャム双生児の孤児院長による料理シーン。
 情報:M.A.<直川礼緒>
パイオニアLDC PIBF-1410

22. 『タロットカード殺人事件』 ウディ アレン / USA 2006
"Scoop" Woody Allen / USA 2006 [2011.1 up]
疑惑にゆれる。魅せられる。

三流マジシャン、シド(ウディ・アレン)のショーで"チャイニーズ・ボックス"に入った女子大生サンドラ(スカーレット・ヨハンソン)は、幽霊となった新聞記者(イアン・マクシェーン)から世紀のスクープを耳打ちされる。それは、ロンドンを恐怖で揺るがす<タロットカード殺人事件>の犯人の名前――。証拠を掴むため、父娘と偽ってシドと、ピーター(ヒュー・ジャックマン)に接近を試みたサンドラだが、洗練された英国貴族の彼にたちまち心を奪われてしまう。恋に落ちたサンドラは、もはやピーターを疑惑の目で見ることができない。しかし、そんなある夜…。(DVDジャケット裏より)
 口琴の演奏シーンはなし、かといってBGMに口琴が使われているわけでもない、「今月の口琴映画スペシャル」その2。
 ピーターの屋敷のパーティーにもぐりこみ、ピーターと会話を交わすサンドラとシドの偽父娘。「楽器は何か演奏するのか?」という話題に。(字幕翻訳:古田由紀子)

ピーター「お父さんは?」
シド   「ブルース・ハープを
      金属の小さな楽器で いい音がする
      昔はユダヤ・ハープと呼ばれたが―
      反ユダヤ主義者が文句を」

 日本語吹き替えもほぼ同じ内容で、「反ユダヤ主義者たちが抗議文を書き、名前を変えさせたらしい」と言わせている。
 「ブルース・ハープBruce harp」とは、あまり見かけない表記だが、このような商品名の口琴も実在している。ユダヤ系のウディ アレンが、ユダヤねたのジョークを披露しているところが味噌なのだろう(せっかくの捨て身の攻撃も、残念ながら、我々日本人には理解困難だが…)。
 しかしながら、原文の会話は、「反ユダヤ主義のごくわずかな匂いを嗅ぎつけると、ヤツらが手紙を書く」であり、文句を言うのは「反ユダヤ主義者」ではなく「反ユダヤ主義に敏感な人たち」。全く逆に誤訳している。
 しかしここはあえて深く突っ込むことなく、話題を無理やり方向転換するサンドラに同調しておこう。「フライ・フィッシングを教えて下さる?」
 情報:GC<直川礼緒>
ウォルト ディズニー スタジオ ホーム エンターテイメント VWDS3559

23. 『散歩』 アレクセイ ウチーチェリ / ロシア 2003
"The Stroll / Progulka" Alexey Utitel / Russia 2003 [2011.2 up]
高級車を降りて、サンクトペテルブルクの街を散歩し始めたオーリャは、アリョーシャと出合い、さらにその親友ペーチャとも知り合う。美しく賑やかな町を闊歩しながら大風呂敷を広げ、アリョーシャとペーチャの仲を裂くオーリャ。ほぼリアルタイムの舞台で、20代の3人は、世界が自分達に与えられたものであるかのように振舞い、一瞬一瞬を楽しんで生きる。エネルギーに満ちた躍動感溢れるこの映画は、最後に、視聴者をサスペンスに引き込むどんでん返しを迎える。(DVDジャケット裏より)<翻訳:Lev Pryamorekov>
 口琴の演奏シーンはなし、かといってBGMに口琴が使われているわけでもない、「今月の口琴映画スペシャル」その3。
 街を歩くオーリャをナンパするアリョーシャ。オーリャの名前を聞き出した彼は、「北方民族」の楽器口琴の弾き真似をする。<翻訳:Lev Pryamorekov>

オーリャ:私はオーリャ。単純でしょ。
アリョーシャ:オリガ、オリガ、オリガ。
      古代の響き。女王たち、タタールの侵入、細長い川。
      北方民族の悲しげな歌 ガオン ワオン ワオン…。
      北に行こう、オリガ。
オーリャ:北に?
アリョーシャ:毛皮を着て。君に情熱的な踊りを見せよう。

 実際の演奏はないにもかかわらず、明らかに口琴である点で、非常に珍しい「口琴映画」である。そこの君!サンクトぺテルブルクの町でイカシタ彼女を見かけたら、即口琴の演奏の真似ですぜ。
 情報:YM<直川礼緒>
Madman Entertainment MMA2306

24. 『野良猫ロック マシン・アニマル』 長谷部 安春 / 日本 1970
"Stray Cats Rock Machine Animal" Hasebe Yasuharu / Japan 1970 [2011.3 up]
トリップ!LSD! 危険な香りを漂わせた長谷部安春監督のシリーズ第4弾! 超・かっこいいレア音源も満載!

シリーズ第四作は、日活アクションの聖地・港町ヨコハマが舞台。基地の町・岩国から、大量のLSDを資金に米軍脱走兵のチャーリー(山野俊也)を海外へ逃亡させようと、ノボ(藤竜也)とサブ(岡崎二朗)が横浜にやってくる。そのLSDをめぐって、マヤ(梶芽衣子)をリーダーとする女の子のグループと、佐倉(郷^治)率いるバイク暴走集団・ドラゴンが対立。クールかつハードな「野良猫ロック」に、カウンターカルチャー世代の気怠さ、そしてコミカルなテイストも加わった異色作。音楽シーンも充実。梶芽衣子の実妹・太田とも子、ズー・ニー・ヴ―、沢村和子とピーターパン、そして日活アクション的なギリシャバーでブルースを歌う青山ミチ! 藤竜也のキャラクターもそれまでと違うインテリ風。このテイストもまた1970年の、ある風俗を切り取ったもの。 佐藤利明(娯楽映画研究) (DVDジャケット裏より)
 日本の口琴映画史上非常に重要な作品が、TF氏によって報告された。その名も「野良猫ロック マシン・アニマル」。梶芽衣子、藤竜也、范文雀らが出演している。なにしろ、オープニングのタイトルバックからして口琴の音だ。演奏シーンもたっぷりある。ノボ(藤竜也)の相棒、サブ(岡崎二朗)がいつも金属口琴を持ち歩いており(道を歩きながら振り回したりしている)、折にふれて弾くのだ。演奏は岡崎二朗本人ではない模様だが、かなり自然に演奏している演技。音もかなり合わせてある。梶芽衣子の歌う「明日に賭けよう」の伴奏でも使われている(音のみ)。ラストでは、暴走集団に殺されたサブの思い出を胸に、遺品の口琴を、藤竜也が車を運転しながら(右手でハンドルを握りながら)、左手一本で口琴を保持し、左手中指で弾く(!!)。口への当て方は少々不自然だが、このような特殊奏法、いったいどこからアイディアが出たのだろうか。。
 この発見ののち、TF氏は、ただちに「野良猫ロック」シリーズ全作品を詳細にチェックしたが、藤竜也・岡崎二朗コンビの出演する「野良猫ロック セックス・ハンター」を含め、全く口琴シーンは確認されなかったとのこと。<直川礼緒>
日活 DVN-144

25. 『クツのお家の子供たち』 デイヴ フライシャー / USA 1935
"The Kids in the Shoe" Dave Fleischer / USA 1935 [2011.4 up]
マザー・グースの「靴に住む女」から奔放に展開する悪ガキのジャズの祭典。
もちろん劣悪な<施設>への皮肉もある。ジャム・セッションの果ての羽毛の雪はジャン・ヴィゴの「操行ゼロ」(1933)へのオマージュだろう。

「船乗りポパイ」「ベティ・ブープ」そして「スーパーマン」などの傑作シリーズの作者、アニメの巨人マックス&デイヴのフライシャー兄弟は、これら人気者の登場しない自由なファンタジー短編も多数制作した。ディズニーの《シリー・シンフォニー》シリーズに対抗する《カラー・クラシック》シリーズである。貧しい者への暖かなまなざし、時におとな向けの痛烈な風刺表現も。これらの積み重ねがやがて「ガリバー旅行記」などの長編に結実する。総監修・解説:おかだえみこ (DVDジャケット裏より)
 「ベティ・ブープ」「ポパイ」「スーパーマン」などで知られるフライシャースタジオ制作の口琴アニメ。
 ママが寝た後に繰り広げられる、こどもたちのどんちゃん騒ぎとマクラ投げの狂宴。演奏シーン(?)が登場する楽器は、ギター、太鼓、ピアノ、ラッパに口琴。口琴を演奏する子は、口琴を投げ捨てた後に、ベッドのスプリングを演奏する。音はもちろん口琴だ。
 きみもママにひまし油でお仕置きされないように、早く寝よう。<直川礼緒>
アイ・ヴィー・シー IVCF-5251 「フライシャー兄弟のカラー・クラシック 1」

26. 『世界の果ての大冒険』 ケビン ビリングトン / USA・スペイン 1971
"The Light at the Edge of the World" Kevin Billington / USA & Spain 1971 [2011.5 up]
豪華2大スター競演、愛とスペクタクルあふれるアドベンチャー巨編!!
「海底二万哩」「八十日間世界一周」のジュール・ベルヌ原作

 カーク・ダグラスとユル・ブリンナー。二人の共通点は、男性的魅力にあふれた精悍な風貌、スケールの大きな演技。この二人ががっぷり四つに組んだ大作が、今まで埋もれていたとは。<スター・ムービー・コレクションBYサルキンド>シリーズ第四弾は、ジュール・ベルヌの「世界の果ての大冒険」。豪華スターと第一級のスタッフの力が結集した、傑作冒険映画の大作である。

 大西洋と太平洋が出会う、南米の最南端ホーン岬。1865年のイースターの日、アルゼンチンはこの岬の灯台に火を灯し、“世界の果ての光”と呼んだ。この灯台は三人の男たちによって守られていた。が、ある日海賊がやってきて二人は殺されてしまう。一人生き残ったデントンは、海の近くの洞窟に避難した。彼らの目的はニセの灯台光によって船を座礁させ、襲うことにある。賊のリーダーであるコングレは、まるで王のような威厳をもつ男。彼はデントンの存在に気づいており、いつか対決する日が来ることを予期していた…。 (VHSジャケット裏より)
 先々月の『野良猫ロック マシン・アニマル』とは、「口琴、それは相棒の忘れ形見」つながり。
 最初の口琴シーンは、冒頭、3人の灯台守のうちの一番若いフェリーぺ メンドーサ(マッシモ ラニエリ)が、水汲みに行くときに、歩きながら演奏する。足場の悪い岩場で、桶を下げた天秤棒と、ペットの猿を肩に、歩きながら、この数々の悪条件にも関わらず、全くくずれを見せない、しっかりとした演奏である。
 このフェリーぺ、歩いているときはいつも口琴を演奏しているようで、もう一人の灯台守、主人公のウィル デントン(カーク ダグラス)と鹿を撃ちに行くときも陽気に鳴らし、ウィルに止められる。
 波止場に着いた船(実は海賊船)を、迎えに行くときも演奏。このあと、海賊に惨殺される。

 しばらく後のシーンでは、海賊のひとりが、やはり歩きながら口琴を演奏している。フェリーぺから奪ったものと思われる。海賊の演奏は、フェリーぺの演奏とは曲調が微妙に異なる(実際の演奏は、おそらく同じ口琴奏者だろうが)。
 海賊の目を逃れて洞窟で暮らすウィル。海賊の手から救い出した、難破船の機関士ジュゼッペに、ウィルがフェリーぺの思い出を語るシーンでは、「フェリーぺは猿を肩に乗せて― ジューズハープを鳴らした」というセリフもある。
 やがて復讐を開始したウィル、口琴を演奏していた見張りの海賊を絞殺し、口琴を取り返し、ポケットにしまう。この時、口琴のアップのシーンあり。(カーク ダグラスによる演奏シーンはない。残念。)

 ほかに登場する楽器として、何故か日本の団扇太鼓がある。女装した海賊の一人が、叩きながら踊り狂う。
 作品的には、ご家族向けの海賊映画としては残酷すぎるなど、2大スターの競演の割には評価は芳しくないようだが、口琴度の非常に高いこの映画、DVD化を強く希望したい。<直川礼緒>
大映 MVH-0078

27. 『シルバラード』 ローレンス カスダン / USA 1985
"Silverado" Lawrence Kasdan / USA 1985 [2011.8 up]
投獄の身だったエメットがシルバラードに向かう途中、風来坊のペイドンと出会う。共にターリーの町に立ち寄った所、エメットの実弟ジェイクが縛り首目前で牢に囚われていることを知る。ペイドンの協力で弟を助け逃亡する3人。その後、酒場で揉め事を起こしていたマルを仲間に加え、ようやくシルバラードに辿り着く。しかしそこは土地独占を企てる牧場主マッケンドリックに牛耳られていた。彼らの余りにもひどいやり方に、そして町や愛する者たちを守るため、エメットたち4人は闘うことを決意する。(DVDジャケット裏より)
 案外身軽なケビン コスナーも活躍する、こてこての西部劇。シルバラードに到着し、ひとまず腰を落ち着けた入植者たちの収穫祭(?)で、ヒーハーと叫びながら踊る人々。伴奏は、口琴、フィドル、ギター、小型のアコーディオン各1名、それに数人の手拍子。帽子にメガネ、髭もじゃで、指出し手袋の男が、金属口琴を演奏している場面が一瞬。(音楽は、この一連のシーンの間中流れている。口琴もかなり聞こえるが、なぜかアコーディオンの音が聞こえない。)右手人差し指で、前方に向かって弾くスタイル。手慣れた様子ではある。
 直後、マッケンドリック一味に襲われて右往左往する人々の1人として、この口琴奏者がかなりアップで2度映る。左手に、キラリと金属の光。錯覚だろうか。口琴を持っているようにも見える。しかし、こんな銃撃戦の最中、口琴を握りしめて逃げ惑う男が果たしているだろうか。何度もコマ送りで見たが、口琴をもっているかどうか、確証は得られなかった。
 「世界の果ての大冒険」をはじめ、これまで紹介してきた映画の多くとは異なり、口琴が劇中に果たす役割は限りなくゼロに近い。<直川礼緒>
ソニー ピクチャーズ エンターテインメント OPL-10799

28. 『(スナイペル サハ)』 ニキータ アルジャコーフ / ロシア連邦サハ共和国 2010
"Sniper Sakha" Nikita Arzhakov / Sakha, Russia 2010 [2011.9 up]
大祖国戦争の最中、その勇敢さ、射撃の正確さ、不死身をもって知られた、サハ人スナイパー達の話に材をとり、勲功をあげたスナイパー、セミョン アルダーホフを主人公とする映画。(DVDジャケット裏より)<翻訳:Nadya Popova>
 「大祖国戦争」とは、第二次世界大戦のうち、ドイツを中心とする枢軸各国と、ソ連の戦い、いわゆる「独ソ戦」を指す。この戦いには、その射撃の腕前を買われ、サハ人の狙撃手が83名参加していた。戦勝65周年を記念して作られたサハ映画である。
 口琴の登場シーンは二箇所。
 激しい戦闘で傷を負った主人公セミョン、野戦病院の近くの丘の松の木の下で口琴を演奏している。右手のひらを顔の方に向け、小指側の手のひらの縁で振動弁を弾く、どちらかといえば特殊奏法である。(演奏は本人ではなく、別録音の模様。)そこへ、看護婦のコーロソヴァがやってくる。(翻訳:Lev Pryamorekov)
 コーロソヴァ こんにちは。具合はいかが?
 セミョン    ありがとう。だいぶ良くなった。
 コーロソヴァ 今演奏していたのは何? これは何?
 セミョン    これかい? ホムスだ。
 コーロソヴァ ホムス?
 セミョン    ああ。
 コーロソヴァ 私たちの所にも、よく似た楽器があるわ。カブィスというの。
 セミョン    カブィス。君はどこから?
 コーロソヴァ カザフスタンよ。
 セミョン    面白いな。カザフスタンでは、水はウー?
 コーロソヴァ スー。
 セミョン    月はウィ?
 コーロソヴァ アイ。
 二人      ハハハ。
(ここからセミョンは、右手人差し指の第二関節を使う、サハの一般的な奏法に切り替える。)
 コーロソヴァ なんて優しく響くのかしら。心に触れるようだわ。あたたかくて、いい気持ち。
          うちに帰ったみたい。故郷の泉にいるみたい。
 セミョン    これは弟のセルゲイのなんだ。あいつは上手に演奏した。
          俺はできない。才能がないんだ。
          君は上手になるかも。あげよう。
(確かに、右手の動きはぎこちない。)
 コーロソヴァ ありがとう。あとで何か大事なものを記念にあげるわ。いい?
 セミョン    いいとも。
(ホムスを受け取ったコーロソヴァ、少し音を出す。右手で保持し、左手人差し指で前方から手前方向に弾く。案外上手である。)

 もう一つの場面では、セミョンがキャンプに戻ってくると、それまでコーロソヴァとの手紙を仲介していた、コックのスチョーパが、布の包みを取り出し、黙ってセミョンに渡す。開くと、そこにはホムスが。野戦病院がドイツ軍に襲われ、コーロソヴァが殺されたのだ。

 この映画でも、口琴は、近しい人の形見として、重要な役割を果たす。しかも、同じ楽器が、弟、恋人、と二人の遺品として。
 第二の場面では、口琴がアップになる。インノケンティイ ガトーフツェフの作であることが明確に見て取れる。戦争中にガトーフツェフがこのタイプのホムスを作っていたのかどうかは未確認だが、可能性は低いだろう。なぜ伝統的なタイプのホムスを使わなかったのだろうか。このあたりの時代考証、楽器考証が、サハではどのように評価されているのか、気になるところではある。
 トランペットの演奏者と、アルト唱者の名前はクレジットされているが、ホムス奏者は残念ながらクレジットされていない。
 なお、セミョンの姓アルダーホフのもとになったと考えられる、サハ語「アルダハ」は、「雨」を意味する。戦闘で命を落とした弟セルゲイの死体を発見する場面と、恋人コーロソヴァとの別れの場面では、雨が激しく降り注ぐ。<直川礼緒>
 (追記)ガトーフツェフは1942年の生まれなので、第2次世界大戦中に、彼のホムスが存在した可能性は全くない。また、サハの口琴奏者スピリドン シシーギンによれば、この映画に登場する銃の形式が、やはり時代に合ったものではないなど、多くの批判も存在する、ということである。(2016.9.)
Sakhafilm, no number

29. 『掠奪された7人の花嫁』 スタンリー ドーネン / USA 1954
"Seven Brides for Seven Brothers" Stanley Donen / USA 1954 [2011.10 up]
躍動感溢れるダンスに、心も踊る。今、蘇る一大スペクタクルミュージカル。

オレゴンの山奥で農場を経営する7人の兄弟。その長男アダムが美しい花嫁を連れて帰ってきたことから、騒動が始まった。兄に続けとばかりに弟たちも町の娘たちに声をかけるが、血気盛んなのが災いして、うまくいっていたのも束の間、大乱闘になってしまう。アダムは、落ち込む弟たちへ元気付けに、"古代ローマ人の略奪結婚"を話して聞かせる。まさか実行するとは思わずに…。(DVDジャケット裏より)
 町にやってきたアダム(ハワード キール)、ミリー(ジェーン パウエル)に目をつけ、彼女の働くバーへ。バーという看板は出ているが、カウンターもある食堂だ。入ってすぐ、ドアの左脇に、口琴を鳴らす男の姿。それほど上手な演奏とは言えない。が、ミリーがアダムに見とれて、配っている食べ物を客の膝に落とすシーンでは、しっかりと笑う。口琴奏者としてはかなりの演技派である。
 演奏シーンはこの1箇所のみだが、祭りに出発する兄弟の場面と、アクロバティックなダンスが炸裂する納屋の組み立て競争の場面では、BGMで、かなり上手な演奏が聞かれる。<直川礼緒>
ワーナー・ホーム・ビデオ DL-56567

30. 『シャンカラーバラナム〜魅惑のメロディ』 K. ヴィシュワナート / インド 1979
"Shankarabharanam" K. Vishwanath / India 1979 [2011.11 up]
躍動高名な古典声楽家と、古典舞踊の踊り手でもある娼館の娘との、十数年にわたる心の交流を描く。
古典音楽の美しいメロディの数々と、ピュアな心を持つ主人公ふたりの人間関係が観客を魅了し、南インドでは大ヒットとなった。(国際交流基金 インド映画祭2003 プログラムより)
 歌って踊ってとなればやはりインド映画だ。厳格で気難しい主人公の声楽家シャンカラーバラナム(J.V.ソーマヤージュル)率いる伴奏者に、必ず口琴モールシン奏者が入っている。(ただし、演奏者が写っているのに、音が入っていない状態は、当然のごとくみられる。)
 最初のステージの場面では、幕が開き、試し弾きをする(演技をする)モールシン奏者役の男(演者不明)が登場。「奏者役」というのは、指はリズムに合わせて動かしてはいるものの、実際には演奏していないことが明らかだからだ。楽器の保持位置も不自然。ガタム(素焼きの壺)奏者も同様、演奏は苦手らしい。彼らにはこのあと、駅のホームでの場面を始め、軽い演技がいくつかあるため、演技のできないミュージシャンではなく、演奏のできない役者が使われたのだろう。
 10年後、シャンカラーバラナムの最後のステージに参加する、年嵩のモールシン奏者は、演技の場面がないためか、舞台上で、実際に演奏をしている様子だ。ただし、このシーンで登場するガタム奏者は、壺を裏返しに伏せて演奏している。このような、ありえない状況を目の当たりにしても、口を閉ざしていたモールシン奏者、その心のうちは?
 シャンカラーバラナムの美しい娘サラダと恋に落ちる、青年(?)の風貌が濃すぎて笑える。<直川礼緒>
EVP DVD EVP2009

31. 『バウンド』 アンディ ウォシャウスキー、ラリー ウォシャウスキー / USA 1996
"Bound" Andy Wachowski, Larry Wachowski / USA 1996 [2011.12 up]
からだで感じる、快感(スリル)な結末。

仮釈放中のレズビアン、コーキーとマフィアのマネー・ロンダラー、シーザーの情婦ヴァイオレットは、出会った瞬間恋に落ちる。激しいセックスの後、ヴァイオレットはシーザーがボスから預かっている200万ドルを奪う計画をコーキーに持ちかけた。やがてオンナ二人の巧妙な罠は仕掛けられるのだが…。S・スタローン主演「暗殺者」の脚本家ウォシャウスキー兄弟の衝撃的な監督デビュー作。主演は「ショーガール」のクリスタル役で強烈な印象を残したジーナ・ガーションと、「ブロードウェイと銃弾」で1995年アカデミー賞助演女優賞にノミネートされた個性派ジェニファー・ティリー。(DVDジャケット裏より)
 この映画で口琴を演奏するのは、主役の一人コーキー(ジーナ ガーション)。演奏シーンは2か所で、1)1人でベッドに仰向けになり(男物のブリーフを穿いている)、2-3回弾く。2)計画の進行を隣の部屋で待つ間、座って2度ほど弾く。どちらも右手親指で、前方に向かって弾いている。
 このほか、この映画の口琴度を押し上げているのが、概ね3か所の、「コーキーが口琴を持っている」シーンである。計画の相談をしたり、ヴァイオレットを待ったり、というシーンで、口琴を手にし、あるいは口琴をもてあそんでいるのだ。何らかの象徴的な意味があるのだろうか。
 この映画の後、ジーナ ガーションは口琴奏者としてのデビューを果たしたらしく、シザー シスターズというバンドの「Ta-Dah」というアルバムほかに口琴で参加している。<直川礼緒>
東芝 PIBF-7017

32.『(ゴミ収集人)』 ゲオルギイ シェンゲリヤ / ロシア 2001
"Musorshchik (Scavenger)" Georgii Shengeliya / Russia 2001 [2012.2 up]
彼は‐ロシアの雪に埋もれたモスクワ近郊のどこかの町のゴミ収集人。彼女は‐誇りを持った都会の女性らしいが、どうしてこの田舎にやってきたかはわからない。そして、それは現代。いつものように寒い朝。真紅のルノーに乗ったブロンド。なかなかホテルが見つからない彼女は、オーバーオールの男を見つけ、誰でもいいから話し相手がみつかり、喜ぶ。しかし男は、ゴミ収集人でありながら、その話し方、動作、皮肉…それらは全くふさわしくなかった。このような振る舞いをするのは、とても深い過去を持った人物たちだ。彼女について彼がどう思ったかはわからない。しかし彼らは、しばらくして再会する。哲学者を気取ったゴミ漁り人‐それはありうる。しかし、大富豪の服を着たゴミ収集人‐ありえない!彼女は、その謎を探ることに決める。たとえそれがとても危険なものであったとしても…。(DVDジャケット裏より)<翻訳:Lev Pryamorekov>
 クリミナル・メロドラマつながりで。
 口琴演奏シーンは2箇所。どちらも、演奏するのは主人公、謎のゴミ収集人「コーリャ」(アレクセイ グシコーフ)。1)自室で、ヌンチャク(?)の練習をしたあと、2)ラストのシーンで、階段に腰掛け、左のポケットから口琴のケースを取り出し、中から口琴を出して演奏する。演奏スタイルは、サハ式。楽器がサハのものかどうかは判然としないが、大きめの口琴で、環状部の表面が平らである。口琴映画としては非常に珍しいことに、エンドロールに「コムズ演奏コンサルタント」としてアレクセイ ストラトノフという名前が見えるが、どのような人物なのか全く不明。
 口琴の音のみ流れるシーンも、冒頭をはじめ、5箇所ほどにも及ぶ。それほど余韻の長い楽器ではないが、息を吸い込んで弁を振動させるテクニックが印象に残る。
 この映画を見つけたのは、2002年秋、ノヴォシビルスクでのこと。ホテルに戻り、テレビをなんとなくつけてみたら、たまたま最後の口琴シーンが映ったのだ。これにはびっくり。あわてて知人に電話し、「今テレビでやってた映画」のタイトルを調べてもらい、翌日、ビデオ屋に走ったのだった。
 なお、コーリャを演じるアレクセイ グシコーフ(アレクセイ グシュコブ)は、2009年のフランス映画「オーケストラ!」で、主人公の指揮者アンドレイを演じている。<直川礼緒>
Pyramid-video, no number

33.『ジーグフェルド・フォリーズ』 ヴィンセント ミネリ / USA 1946
"Ziegfeld Follies" Vincente Minelli / USA 1946 [2012.3 up]
ブロードウェイの名プロデューサー、ジーグフェルドの栄光を称えて、彼の手掛けたミュージカルやバラエティの数々を、MGMのスターたちが総出演して回想するという豪華版。「巨星ジーグフェルド」で本人を演じたウィリアム・パウエルがこの作品でも本人を演じ、プロローグで進行役をつとめている。歌やダンスに加えてE.ウィリアムズの水中バレー、R.スケルトンの酔っ払い芸と見所たっぷりのレヴュー映画と言えよう。(DVDジャケット裏より)
 怪しい男つながり。
 ダンスや歌、コントや水中バレーなどを詰め込んだ寄せ鍋風作品。中の一編、「ドラマティック パントマイム」ライムハウス ブルーズで、口琴奏者が登場する。
 フレッド アステア演じる中国人が、チャイナタウンをそぞろ歩く。と、ストリートミュージシャンの一団が。歌+タンバリン、ギター、6角形のアコーディオン(コンセルティーナ?)、口琴、そして踊りの6人組だ。ヨーロッパ人らしい。皆、踊りながら演奏している。
 このような楽器の組み合わせは、単なる空想の産物なのか、それとも本当にチャイナタウンにいたのだろうか。
 それにしても、フレッド アステアの一重まぶたメイクが不気味だ。情報:JS <直川礼緒>
ジュネス企画 JVD-3087

34.『ファンタスティック Mr. FOX』 ウェス アンダーソン / USA・イギリス 2009
"Fantastic Mr. Fox" Wes Anderson / USA & GB 2009 [2012.4 up]
Mr.FOXは盗みをしながら暮らしていたが、妻のMrs.. FOXとちょっと変わり者の息子アッシュのために足を洗い、今は穴暮らしをしながら新聞記者として働く日々。だが、「もっといい暮らしがしたい!」そんな欲求にかられた彼は、丘の家を購入することに。しかし丘の向こうには意地が悪い3人の農場主(人間)が済んでいた。憧れの家へ引越し、人間に近づいたMr. FOXは野生の本能が目覚めてしまい、人間たちの飼育場から昔のように獲物を盗むことに熱をあげていく。日々獲物を盗まれる人間たちの怒りはついに絶頂に達し、結束した3人はトラクターを使って根こそぎ丘を掘りかえし始めた―。父親として、"ファンタスティック"に生きたいMr. FOXと土の中で生活する彼の仲間たちは、野生の本能と誇りをかけ、人間たちと戦い始める!
ジョージ・クルーニー、メリル・ストリープ他、豪華声優陣が集結!すばらしきキャストとスタッフが、人形たちにリアルな息吹を与える!
(DVDジャケット裏より)
 人形ストップモーションつながり(『ジーグフェルド・フォリーズ』の方は、冒頭の少々だけですが)。
 Mr. FOXの住む木のある丘を、重機で掘りかえす人間たち。夜、たき火を囲み、ピーティのバンジョーと歌に合わせ、様々な楽器を演奏する。登場順に、口琴、ベース、瓶(吹く)、洗濯板、スプーンズ、カボチャ(叩く)、指パッチン、アルミの灰皿。演奏はカントリー風だが、口琴は、インド製なのか、振動弁の尻尾が枠から長く突き出している。最初のほうはかっちりと演奏しているが、途中からいい加減になるのが面白い。
 演奏シーンはここのみだが、BGMにもふんだんに口琴が使われている。口琴ソロもあり、時として、演奏に主張が見られるのが、映画のサントラの中の口琴としては非常にユニークである。演奏しているのは、Paul Clarvisというパーカッション奏者。ちゃんとクレジットされている。情報:TK <直川礼緒>
ハピネット BBBF-8707

35.『きみに読む物語』 ニック カサヴェテス / USA 2004
"The Notebook" Nick Cassavetes / USA 2004 [2012.5 up]
彼女を愛する一人の男の力によって病を克服する奇跡の愛の物語。
憶えているだろうか。きみは、17歳だった―――。
とある療養施設にひとり暮らす初老の女性。
老いてこそ
(ママ)迎えてはいるがたたずまいも美しく過ごしている彼女はしかし、
情熱に溢れた若い時代の思い出をすべて失ってしまっている。
そんな彼女のもとへ定期的に通う初老の男。
デュークと名乗るその男は、物語を少しずつ読み聞かせている。
語られるのは1940年代のアメリカ南部の小さな町の、きらめくような夏の物語――。(DVDジャケット裏より)
 バンジョーと洗濯板つながり。
 納屋でのパーティー。ヒロインのアリー(レイチェル マクアダムス)が、右足でリズムをとりながら、口琴を演奏する。バックアップは、洗濯板、フィドル2本、スプーンズ、バンジョー、ハーモニカ、ドブロ(あるいはダルシマー?)、手拍子の面々。
 不思議なのは、アリーが口琴を弾いていない時も、口琴の音が流れていることだ。
 若いころに口琴をやっていたとしても、認知症からは逃れられない、という見本のような映画。情報:PO <直川礼緒>
ハピネット KBIBF-5747

36.『賽徳克・巴莱』 魏 徳聖 / 台湾 2011
"Seediq Bale - Warriors of the Rainbow" Wei Te-Sheng / Taiwan 2011 [2012.9 up]
1930年、日本統治下の台湾で起こった先住民セデック族による抗日暴動・霧社(むしゃ)事件を描く。
2011年台湾映画最大の話題作がついに日本上陸。第1部となる本作は、自分たちの文化や習慣を禁じられ、過酷な労働を強いられていたセデック族が、部族の誇りをかけた蜂起に至るまでのドラマ。安藤政信、ビビアン・スー、木村祐一ら日本でおなじみのスターも出演!
 セデック族と来れば、口琴は当然だろう。「太陽旗」「彩虹橋上」の2部からなるが、口琴演奏シーンが登場するのは第1部「太陽旗」。
 2か所の口琴シーンは、どちらも結婚のシーン。
1. 主人公モーナ ルダオMuona RudoとBakanの結婚の祝いで、輪になって踊る人々の中に、かなり激しく踊りながら、紐口琴を演奏する女性の姿が見える。
2. 約20年後、日本占領下のマヘボ社。WatabとLubiの結婚の祝いで、少なくとも女性一人、向かい合った男性二人が紐口琴を演奏しながら踊っている。
 他にも、狩りのシーンなどのBGMに、口琴の音が流れる。期待したほど重要な役割を果たさないのが残念。<直川礼緒>
得利影視骰[イ+分]有限公司 CMD2332

37.『ラモーナのおきて』 エリザベス アレン / USA 2010
"Ramona and Beezus" Elizabeth Allen / USA 2010 [2012.10 up]
天才子役ジョーイ・キング主演!
家族+ネコの絆を描いたハートウォーミング。・ムービー!!

空想が大好きでやんちゃな女の子ラモーナは、しっかり者の姉ビーザスとパパとママと妹、そして猫のピッキー・ピッキーと暮らしている。ある日、パパが職を失う大事件が起こり、引っ越しをすることに!今の家が大好きで、さらにビーザスに片思いの男の子がいることを知ったラモーナは、何とか引っ越しを食い止めようと、パパにぴったりの仕事探しを始めるが…。(DVDジャケット裏より)
 「結婚パーティでの口琴演奏」つながり。
 ちょっとした切っ掛けですぐに妄想の世界に入り込むキュートなラモーナ。学校の音楽の時間には、タンバリンを担当。隣では、近所の仲良しの男の子ハウィーが、金属口琴を演奏している。前のスーザンの巻き毛の揺れるさまと、口琴の音の相乗効果でトランス状態(?)に陥り、誘惑に負けて、思わずスーザンの髪を引っ張ってしまう、はた迷惑なラモーナ。その後も目眩が直らず、直後に吐いて、さらに顰蹙を買う。
 もう一か所の口琴シーンは、ラスト、仲良しのビーおばさんと、その元彼、隣のホーバートが、よりを戻し結婚、そのパーティの場面。例によって音楽の先生がギターを弾きながら、昔ホーバートがビーおばさんに捧げた曲を歌う。伴奏は、子どもたちによる、キーボード、マラカス、レインスティック、カバサ、タンバリン、トライアングル、でんでん太鼓、ウクレレ、バイオリン、リコーダーetc. ソロをとる(?)のが、ハウィーの口琴である。ドジが直った(?)ラモーナ、友達の巻き毛も引っ張らないし、吐きもしない。めでたし。
 楽器編成が、他の多くの西部劇などのアメリカ映画に見られるような、カントリー&ウエスタン調とは異なり、学校の音楽教育現場に無理やり口琴が潜りこんだような状態になっているのがユニーク。ハウィーを演じるJason Spevackは、カナダの比較的有名な子役らしいが、他の作品でも口琴を演奏しているのだろうか。情報:TK <直川礼緒>
20世紀フォックス ホーム エンターテインメント ジャパン FXBNM-38647

38.『達吉和[女+也]的父親』 王 家乙 / 中国 1961
"Daji And Her Father" Wang Jia-Yi / China 1961 [2012.12 up]
達吉(ダジ)は、こどもの頃、漢族の父親のもとから、彝族の奴隷主に連れ去られた女の子。同じ奴隷であった馬赫爾哈(マホルハ)に命を救われ、革命後、人民公社の社長となったマホルハの娘として大涼山で暮らしている。
ある日、水力発電所建設のため、漢族の建設支援隊がやってくる。その隊長、任秉清は、明るく聡明なダジを見て、13年前にさらわれた自分の子ではないかと疑う。
いくつかの証拠により、それが事実だとわかったとき、ダジと二人の父親は悩む。彼女は誰と暮らすべきなのか?
 「パーティでの口琴演奏」つながり。
 水力発電所建設のために大涼山にやってきた、漢族の建設支援隊を歓迎する宴を開く彝族の人民公社社長マホルハ。倍音が笛のように響く見事な口琴演奏を披露するのが、物語のヒロイン、ダジ(陳学[シ+吉])である。
 直後に、ダジが、演奏していた口琴を、顔の前で手に持って、話を強調する小道具として使う場面が存在するが、動きが速すぎて、楽器そのものは、竹製なのか真鍮製なのか残念ながら判然としない(形状的には真鍮製か?)。
 このあとにも、若者たちの芦笙舞の場面で、女性の踊り手たちが右手を顔の横でひらひらと動かす振りがあるが、これは口琴演奏を表現しているのではないだろうか?
 VCD盤では、なんとジャケットに口琴を演奏する達吉が! <直川礼緒>
峨眉電影制片厂音像出版社 BD989

39.『レッド・ウォリアー』 セルゲイ ボドロフ、アイヴァン パッサー / フランス・カザフスタン 2005
"Red Warrior (Nomad / The Warrior)" Sergei Bodrov, Ivan Passer / France & Kazakhstan 2005 [2013.2 up]
ハリウッド発。アカデミー賞のスタッフが贈る、もう1つの「レッド・クリフ」登場!

後にアブライ・ハーンと呼ばれ、歴史に名を残す若き英雄マンスール率いるカザフ族が、数百の軍勢で1万の大ジュンガル軍を打ち破ったという史実“トルキスタン城砦の戦い”を描いたスペクタクル巨編。

遊牧の民カザフは小国の君主がバラバラに統治し、結束力にかけていたせいで残忍なモンゴルのジュンガル族の執拗な侵略に脅かされていた。しかし、軍師のオラズは「ある日チンギス・ハーンの末裔が現れ、カザフを束ね敵に立ち向かうであろう」と予言していた。時が流れ、“予言の子”が成人した事を知ったジュンガル族の王ガルダンは、1万人の大兵士団でカザフの要トルキスタン城砦に攻めて来るが…
 主役の3人(クノ ベッカー、ジェイ ヘルナンデス、マーク ダカスコス)がカザフ人(やジュンガル人)に見えなくて違和感があるのには目をつぶるとしても、最後の合戦場面が、「もう一つのレッドクリフ」を謳う割には期待はずれ、など問題点は多い。だが、馬を多用した中央アジアらしい映像に、ハリウッド仕込みのアクションをプラス、ストーリイもそれなりに楽しめる。日本盤が出ていたとは!そして何といういい加減な邦題!!
 ジュンガル兵に囲まれ、トルキスタン城塞に立てこもる数百名のカザフ族。総攻撃の前夜、城塞を見回るマンスール。焚火の前に名もない親子が。父親が口琴を演奏している姿が一瞬(二弾き)映る。演じるのはカザフの口琴奏者エディル フサイノフ(本作ではKusainovと表記)。来日経験も何度かあり、日本口琴協会主催でコンサートも行っている。
 ジュンガル兵の襲来の場面では、喉歌(これもおそらくエディルによる)も不気味に響く。
 このほか、クレジットには、カザフ クルマンガズィ民族楽器オーケストラのメンバーとして、Mouth Harp奏者のErsain Basykraという人物の名も見えるが、BGM中に口琴の音を聞き分けるのはほぼ不可能。<直川礼緒>
クロックワークス KWAT-003

40.『歌っているのはだれ?』 スロボダン シャン / ユーゴスラヴィア 1980
"Ko To Tamo Peva (Who's Singin' Over There?)" Slobodan Sijan / Yugoslavia 1980 [2013.6 up]
1941年4月5日――ドイツによるユーゴスラヴィア侵攻の前日、美しい田園風景が広がるセルビアの片田舎にぽつねんと建つ一軒家。ここが首都ベオグラード行きのバスの出発点となっていた。すでに数人の男たちがバスの来るのを遅しと待っていた。(VHSジャケット裏より)
 狂言回し的に登場する二人のジプシー。歌いながら、一人はアコーディオンを、もう一人は口琴を演奏する。口琴は、若いほうのジプシーの担当。演じるのは、ネナド コスティッチ。非常に印象的な歌は、二人とも本人が歌っている感じがするが、楽器はアコーディオン・口琴ともに、明らかに別録音。どちらも、弾くふりは一応しているが、実際にはほとんど演奏できない様子だ。口琴の弾き方からして、真横に引っ張っており、これでは鳴らない。
 このほかにも、バスが出発する場面を主として、馬が走り出したり、乗客たちが二人のジプシーにリンチしたりといった、何かが動き始める場面で、口琴のBGMが10回以上鳴る。口琴度の高い映画だ。
 ジプシーと口琴の関係は、一般的にそれほど濃厚ではない。ハンガリーなどでは、ジプシーの鍛冶師が作った、という話は聞くが、ジプシー音楽の録音では、口琴は全く使われていない。ある意味貴重な映像ではある。
 また、ユーゴスラヴィアの伝統音楽のCDなどで、口琴が使われている例はほとんどないにも関わらず、エミール クストリッツァ監督の『白猫・黒猫』(今月の口琴映画[2.]を参照)とともに、なぜか映画の中では効果的に使われているのも不思議。
 個性的な乗客たちがユニークに描かれている中、いつの間にか一番後ろの席に影のように座っている老婆が謎だ。<直川礼緒>
パステルビデオ PS-9004

41.『許されざる者』 李 相日 / 日本 2013
"Yurusarezaru Mono (Unforgiven)" Lee Sang-il / Japan 2013 [2014.1 up]
伝説の「人斬り」が、再び刀を抜き放つ――。
人は、どこまで許されるのか。
世界が注目する日本映画、誕生。

男たちの覚悟が、女たちの意地が、感情の臨界点を超える。
舞台は1880年、北海道。主人公は、幕府軍の残党で、かつては"人斬り十兵衛"と恐れられた男。愛する妻と出会い、刀は棄てたはずだった。しかし、妻亡き後、幼い子供たちと極貧の生活にさらされる日々のなか、昔の仲間が"賞金首"の話を持ってやって来る。客にずたずたに切り刻まれた女郎と彼女の仲間が、街を牛耳る暴力的な支配者に逆らって、自分たちで貯めた金を賞金に敵を討ってほしいと懇願しているというのだ。自分のためなら二度と手にすることのなかったはずの刀を、男は再び抜き放つ。それゆえに背負うことになる罪も、痛みも、孤独も、すべて黙って引き受けて。子を思うとはかくも切ないものなのか。女たちの誇りとはかくも気高く残酷なものなのか。友を弔うとはかくも凄まじい所業なのか――。強くもあり、弱くもあり、美しくもあり、醜くもある人間の、最後の祈りに、心が、震える。
(DVDジャケット裏より)
 久々の日本の口琴映画。クリント イーストウッドの西部劇「許されざる者」の、舞台を北海道に置き換えたお話し。[20.]の、オードリー ヘプバーン主演の「許されざる者」とともに、世界にいくつかある「許されざる者」という名の映画のうち、2本までが口琴映画、ということになる。
 湖のほとりで竹口琴ムックリを演奏するのは、アイヌコタンの娘。それを寝そべって聞いていた、アイヌ人と和人のハーフの沢田五郎(柳楽優弥)、「やめろ!俺はその音が嫌いなんだ。」という。不満げに演奏をやめる少女。
 その直後、「人斬り十兵衛」こと釜田十兵衛(渡辺j謙)が、亡き妻のコタンの長老を訪ねるために通りかかり、それを見かけた五郎は、十兵衛の後を追って賞金稼ぎの一行に加わることになる。
 「やめろ」といわれても、意地を張ってムックリを演奏し続けるような演出が欲しかった…、といえば欲張りすぎか。
 食べるものもない貧乏のどん底に暮らす登場人物が、馬だけは立派なものを持っているのが、他はあらゆるところでリアリティが追及されている分、なんともいえず違和感がある…(お話とはわかっていますが)。<直川礼緒>
ワーナー・ホーム・ビデオ 1000455905

42.『ティルマライ テンクマリ』 A. P. ナガラジャン / インド 1970
"Thirumalai Thenkumari" A. P. Nagarajan / India 1970 [2014.2 up]
同じ集合住宅に住む人々が、巡礼の旅に出かけた…
 前々回[40.]の「歌っているのはだれ?」とはバス旅行つながり。オープニングの曲からいきなり口琴の音が聞こえるだけでなく、演奏シーンもある、立派な口琴映画である。
 南インドはマドラス(チェンナイ)のひとつのマンション(とその近所)に住む、約12家族、約34人が、聖地巡礼のバス旅行に出かける。教授、メカニック・エンジニア、医者、占星術師、歌手、軍人、質屋、学生…。その多くがタミル語を話す人々だが、テルグ語やカンナダ語を話す人々も。約12家族、というのは、まだ結婚していないカップルもいるので。人数は、運転手と車掌を含めて32人ではないかと思われるが、作品中に「私たちは皆で34人」というセリフがある。いずれにせよ悠久のインド的な数字。ティルパティに始まり、マイソール、グルヴァユル、そして最後に、インド南端のカンニヤークマリと、各地のお寺巡りをする。2時間半近いタミル映画。
 小さなエピソードをはさみつつ、それぞれのお寺でお参りし、歌手(シルカジ ゴヴィンダラジャン)が歌を捧げる。二つ目の、マイソールのお寺では、乗客の女性たちが踊り、歌手のバックにはミュージシャンが付く。バイオリンにはトカゲ顔の(失礼)クンナクディ ヴァイディヤナタン。ムリダンガム、ガタム、カンジーラ、そして口琴モールシンの南インド4大パーカッションがリズムを支える。モールシン奏者は、伝説的なR. V. パッキリスワミ。体を揺らし、楽しそうに演奏している。ガタム(壺)奏者が、比較的大きな楽器を、演奏中に空中に放り上げるシーンなどもある。画面に映っていない楽器の音が聞こえたり、画面ではバイオリンを弾いているのに、音が聞こえないなど、明らかに別録音だが、本物の口琴奏者が演じる口琴演奏シーンは貴重だ。曲は「Madurai Arasalum Meenakshi」。
 お話はそれほど複雑ではないが、細かい点でいろいろとわからないことが多い、文化の外にいる者にとっては難解な映画である。
 たとえば、迷子になった乗客の男の子が、見つかった後で頭をまるめたのは何故か? 映画の題名に関して、最初の巡礼地ティルパティ(地名&寺院名)があるのは、「ティルマラ山」(なぜ「ティルマライ山」ではない?)の麓らしいのだが、では最終目的地カンニヤークマリとテンクマリの関係は?ヒロインの女子学生ギータGeethaの名が、何故ときどきシータSeethaと字幕に表記されるのか(少なくとも私が見た英語字幕版では)等々。
 この英語字幕がまた曲者で、全くないのに比べたら、話の流れを掴むのに非常に役立ちありがたいのだが、難解な訳、無理な行替え・ページ替え、どこからどこまでが誰のセリフかわからない、など、もうちょっとなんとかして欲しい、というのは欲張りか。今の発言は誰のもので、何の意味なのか、などと思っているとどんどん置いていかれる。
 だいたい、上記の口琴の入る曲の歌い出しの英語字幕が、「Meenakshi who rules in Madurai is Kamatchi in great town Kanchi!」である。宗教的・地理的知識が不足しているのは承知の上だが、これは一体何を言いたいのだろうか?しかも、叫ぶほど重要なことなのかっ! 数々の疑問にすっきりとした答えをお持ちの方、ご連絡を。
 この映画の存在、口琴奏者の名前など、多くの情報は、モールシン奏者竹原幸一氏にうかがった。南インドの口琴モールシンに関しては、氏のサイト「モールシンの領分」 http://www.morsing.jp/ 、ブログ http://ameblo.jp/morsing/ へ。<直川礼緒>
Modern Digitech Media MC-071

43.『ミズーリ横断』 ウィリアム A. ウェルマン / USA 1951
"Across the Wide Missouri" William A. Wellman / USA 1951 [2014.3 up]

1880年代のはじめ、ロッキーの山中に海狸の生息地を見つけた猟人フリントが、インディアンと友好関係を結び酋長の娘と結ばれる。やがて男の子が生まれるが、彼を快く思わぬインディアンの一派がフリントを襲い、愛児を奪いかけられるという危機に陥るのだった。ウェルマンのメリハリのある演出が心地よい。開拓時代の猟人たちの日常生活が丁寧に描かれていることや、西部劇お決まりの砂塵の舞う荒野ではなく、ロッキーの美しい自然が色彩豊かに描写されているのも楽しい。(DVDジャケット裏より)

 今回は、久々に口琴度の非常に高い映画である。何せ、口琴を演奏するのは、主役、「風と共に去りぬ」のクラーク ゲーブルだ。
 一番の見所は、幼いころにネズ パース族に連れ去られたブラックフット族の娘カミアと結婚し、彼女の故郷へ向かう道中、ビーバー猟師のフリント(クラーク ゲーブル)が、倒木の上に座って演奏。曲は、「Skip to My Lou」。歌いながら演奏する設定だが、細かい点で、いろいろ気になることも。まず、楽器を口に当てる位置がおかしい。そして、歯にしっかり当てていないのに、ちゃんと口琴の音がするのも変。急いて出発の準備に取りかかった(?)フリント、あれれ、口琴はどこにしまったのか、と見ていると、心配ご無用、今まで腰かけていた倒木の上にちゃんと置き忘れて(置いて?)あり、それを取り上げて、フリントの真似をして、カミア(マリア エレナ マルケス)が口琴演奏。英語の歌詞をたどたどしく歌いながらの演唱だ。口琴が、二人の心を繋ぐ小道具として上手に取り扱われているのが、演奏状態の不自然さを問題と感じさせないほど好ましい。
 「Skip to My Lou」は、映画のオープニングのタイトル曲にもオーケストラアレンジで使用されている、この映画の重要なテーマ曲。他にも、カミアの結婚の返事を待つ場面でも、フリントが口琴で演奏し、また、カミアの歌のみのバージョンも後半にある。
 さらに、結婚祝いのパーティーでは、ダンスの伴奏に、フリントとは別の口琴奏者の姿も見える。楽器はほかに、アコーディオンとビン(吹く)。(メロディを奏でるフィドル奏者の姿は画面には登場しない。)曲は、「Devil's Hornpipe」。この人は、乱闘開始まで口琴を演奏し続けるが、殴り合いの中のどの人物なのか、あるいは乱闘に加わっていないのか特定が非常に困難。
 率先してこの意味不明の殴り合いに参加する白人たちに対して、じっと静観するネズ パース族の人々。好戦的で野蛮なのはどっちだ。<直川礼緒>
ジュネス企画 JVD-3251

44.『スノー・バディーズ 小さな5匹の大冒険』 ロバート ヴィンス / USA 2008
"Snow Buddies" Robert Vince / USA 2008 [2014.5 up]
愛くるしい5匹の"しゃべる"ゴールデン・レトリーバーの子犬たちが繰り広げる、ユーモラスで心温まる大冒険が登場です!
5匹の子犬"バディーズ"―食べることが大好きなバダボール、ヒップホップ通のビードッグ、紅一点のローズバッド、禅の道を追求するブッダ、泥んこ好きのマッドバッドは、それぞれの優しい飼い主にかわいがられて幸せに暮らしています。ある日、美味しい物に目がないバダボールが、アイスクリームのトラックに潜入。他の子犬たちも一緒に乗り込みます。ところが、そのコンテナは飛行機に乗せられ、舞い降りた所は遠くアラスカの大地!家に帰りたい一心で懸命に雪原を駆けていくうち、1匹のハスキーの子犬シャスタに出会います。シャスタと共に、飼い主の少年の夢を叶えるために犬ぞりレースに出場することになるバディーズ。様々な困難を乗り越え、過酷なレースを完走し、無事に故郷に帰ることができるでしょうか…。
かわいい子犬たちのNGシーン集など楽しいボーナス・コンテンツも満載の、親子のためにディズニーが贈る子犬たちのハッピー・アドベンチャー!
(DVDジャケット裏より)
 ヒマそ〜な、ワシントン州ファーンフィールドのダン保安官(マイケル テイゲン)、机に脚を上げて、口琴を吹いている。いなくなった子犬たちを探して、と飼い主たちが保安官事務所に駆け込むと、あわてて口琴に唇を挟まれた模様。ただそれだけの口琴シーンだ。
 ドジで間抜けなこの保安官を象徴する小道具として登場するのが、口琴と、縄梯子。
 アメリカ映画としては珍しく(?)、ソ連(!)の男が、いいヤツとして(というか、ありふれた被害者として)登場している。今時ありえないほどの非道の限りを尽くす、大人げない悪役は、フランス人だ。
 この5匹の子犬たちを主人公とした映画は、他にも作られているようだ。口琴が登場するかどうか、ご存知の方、お知らせください。情報:TM<直川礼緒>
ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン VWDS2342

45.『ウィッカーマン』 ロビン ハーディー / UK 1973
"The Wicker Man" Robin Hardy / UK 1973 [2014.6 up]
外界から閉ざされた島で起こった迷宮事件
まさかのラストがゾクリと怖い官能ホラー!

男は消えた少女を折って、この島に来た。
人生最大の恐怖が待っているとも知らずに…

敬虔なクリスチャンであるハウイー警部(エドワード・ウッドワード)は、スコットランド本土から、"性"の神が崇められているサマーアイル島にやってきた。彼の目的は、行方不明の少女、ローワン・モリソンの捜索。さっそく彼女について聞き込みを開始したハウイーだったが、島民はおろか実の母親にすら固く口を閉ざされてしまう。なおも捜索を続けるうち、ローワンが、島に伝わる豊作祈願「メイデー祭」の生け贄として囚われている可能性が浮上。ハウイーは、領主であるサマーアイル卿(クリストファー・リー)に話を聞くが相手にされず、本土に戻り応援を呼ぶことを決意する。だが、彼の飛行機のエンジンは、何者かによって破壊されていた・・・。
(DVDジャケット裏より)
 おまわりさんつながりで。
 学校の庭のメイポールのまわりで、キリスト教徒には耐えられない内容の(?)歌をうたいながら踊る男子生徒たち。伴奏楽器は、ギター、アルトリコーダー、フィドル、ハーモニカ(?)に口琴。一瞬だが、口琴奏者のアップも映る。
 キリスト教徒には超恐ろしいのかも知れないが、宗教心のうす〜い筆者には、何だかのんびりした「ホラー映画」だとしか思えない。
 2006年には、ニコラス ケイジ主演でリメイクされているが、こちらでは口琴演奏シーンはない模様。情報:TM<直川礼緒>
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン UNPD-31943

46.『廿日鼠と人間』 ルイス マイルストン / USA 1939
"Of Mice and Men" Lewis Milestone / USA 1939 [2015.2 up]
頭が弱い大男と賢い小男のかけがえのない友情
スタインベック×マイルストンの才能が結合

アメリカの文豪スタインベックの「エデンの東」と「怒りの葡萄」とともに頂点をなす名作のベスト映画化。農場から農場へ渡り歩く日雇い労働者の大男と小男は、家と農場を持つ夢を抱いていた。体ばかり大きくて頭は弱い大男は行く先々で問題を起こし、賢い小男が始末をつける。雇ってくれた農場の主人は肉感的な女房に口を出す連中に喧嘩を売るくせがあり、力が強過ぎる大男は嫉妬深い主人の手をにぎりつぶし、その女房の髪を愛撫しようとして首の骨を折ってしまう。男たちのかけがえのない友情に結末が訪れた。きれいごとだったアメリカ映画がリアリズムに目覚めた時代を象徴する名作。92年リメーク版は遠くおよばない。監督は「西部戦線異常なし」(アカデミー作品賞)、「雨」のルイス・マイルストン。1939年度アカデミー作品賞候補。 日野康一
 (DVDジャケット裏より)
 [13.]の「怒りの葡萄」と同じく、ジョン スタインベック原作。
 問題を起こして、追っ手から逃げるジョージとレニー。列車に飛び乗ると、そこには数名のタダ乗りの先客が。一人が口琴を演奏している。音と手の動きはあまり合っていないが、演奏はなかなか上手(何の曲か分かる方、教えてください…)。
 1992年には、ゲイリー シニーズとジョン マルコヴィッチのコンビでリメイクされているが、こちらでは口琴演奏シーンはない模様。<直川礼緒>
アイ・ヴィー・シー IVCF-2316

47.『処女の泉』 イングマール ベルイマン / スウェーデン 1959
"Jungfrukallan (The Virgin Spring)" Ingmar Bergman / Sweden 1959 [2015.3 up]
信仰と復讐…。「宗教」の本質を問う最高傑作

16世紀のスウェーデン、キリスト教を深く信仰する豪農の一人娘(ビルギッタ・ペッテション)が、ある日曜日、召使を伴に東方の教会へロウソクを捧げにいく。途中、古来からの異教を信仰している召使と言い争う。一人で教会に向かった娘は森で三人の旅人に会い、食べ物を振舞うが、その優しさが仇となって殺されてしまう…。
 (DVDジャケット裏より)
 「20世紀最後の巨匠」ベルイマンの作品。アカデミー外国語映画賞(1961)を初め、数々の賞を受けた、「傑作」とされる。しかしながら、口琴好きにとっては、何とも後味が悪い作品だ。
 口琴を演奏するのは、悪人3兄弟の長兄、「痩せた羊飼い(演じるは、アクセル デュベルグ)」。少々ワガママだが純真無垢な少女を、ピクニックに誘い、凌辱し、殺す。知り合いになる切っ掛けとして使うのが、口琴だ。
 これまで「今月の口琴映画」でご紹介してきた様々な映画で、口琴は概ね2種類の役割を果たしている。「非常に重要な小道具」か、「ほとんど何の役にもたっていないモノ」かだ。重要な小道具として映画に登場する場合は、確かに、マフィアや犯罪者、チンピラなどの悪人諸君と関連付けて登場する場合も多く、また、異性との淡い恋心を繋ぐ懸け橋としても使われる口琴だが、この映画の直截さ、救いの無さはなんだ。これが「巨匠」の考える口琴像か?
 他の映画では、どんなにシリアスな悪人が演奏したとしても、「それはありえないだろう」と笑えるのが口琴だが、この映画で負わされた役割は酷い。実際にこの映画のせいで口琴に嫌悪感をもつようになった、という女性とニュージーランドで出会ったことも。誤解しないでいただきたい。口琴奏者だからといって、強姦魔・殺人鬼とは限らないのですよ。ほら、怖くないですよ〜。びよ〜〜ん。<直川礼緒>
ムービーテレビジョン BBBF-1282

48.『傷だらけの天使』 阪本 順治 / 日本 1997
"Kizudarake no Tenshi (Scarred Angels)" Sakamoto Junji / Japan 1997 [2015.4 up]
飛ぶって思えば、飛ぶんだよ

探偵の木田満(豊川悦司)と弟分の石井久(真木蔵人)は似た者同士のチンピラコンビ。ある日、元締(宇崎竜堂<ママ>)にヤクザ事務所の悪事探しを命じられ仕事に出向いた満は事務所からでっぷり太った男が出てくるのを見る。中に忍び込むとそこには瀕死の状態のヤクザ(三浦友和)が。男は息子の蛍(類家大地)を青森の母親に送り届けるよう頼み息を引き取る。久の部屋に転がり込んだ満だが久に愛想を尽かされ仕方なく蛍と二人で青森へと旅立つ。一方、ひとり残った久だが満が気にかかり八戸へ。再会する二人。男三人の旅が始まる。そこで一人の美しい女性立花英子(原田知世)と出会う。やがて探し当てた母親は再婚する自分の都合ばかりで蛍を引き取らない。キレタ満たちは再婚相手も巻き込んで大ゲンカ。居合わせた英子がそっと満に差し出したハンカチ、二人の気持ちが通い合う。最後まで蛍を引き取らなかった母親。失意の中、三人は蛍の父方の祖父(菅原文太)を訪ねる。頑固な祖父だが二人の男気に蛍をひきとることに…。旅を続けることにした二人は英子に再会。喜んだのも束の間、怪しい太った男の影が近づいていた。倉井を殺った奴等が追ってきたのか?英子との恋の行方は?そして二人の道中は?
(DVDジャケット裏より)
 ありえない口琴奏者の代表といえば、トヨエツ主演のこの映画に登場するてっぷりと太った殺し屋。左利きである。仕事の後には、口琴を演奏しながら現場を去るのが特徴らしい。首からはいつでも(殺しの最中でも)アメリカ製(?)の金属口琴を紐でぶら下げている、大の口琴愛好家。白いシャツの腹には、赤い染み。血か?と思ったら、好物ホットドッグのケチャップだ。
 この、キャラの立った太った殺し屋役を演じているのは一体誰?キャストのクレジットを見ても、よくわからないのです。ご存知の方、教えてください。
 なお、どのようなめぐり合わせか、ヒロイン原田知世は、1995年の「あした」[3.]に続き、2本続けて口琴映画に出演している。情報HE <直川礼緒>
吉本興業株式会社 DA-0104

49.『スヌーピーとチャーリー』 ビル メレンデス / USA 1969
"A Boy Named Charlie Brown" Bill Melendez / USA 1969 [2015.5 up]
何てこった!チャーリー・ブラウンが映画スター?
チャーリー・ブラウンと「ピーナッツ」の仲間たちが、チャールズ・M・シュルツ初の長編アニメ映画で映画の世界に登場。世界中で大人気の漫画「ピーナッツ」のキャラクターたちの魅力が満載。楽しい音楽も思わず笑いを誘う。
チャーリー・ブラウンは、シーズン最初の野球の試合を前に奮い立つが、マウンドはタンポポの花でいっぱい…。がっかりするチャーリーを横目に「ピーナッツ」の仲間たちは、あいかわらずのマイペース。そんな「ピーナッツ」の仲間たちの楽しい毎日で物語は綴られていく。
(DVDジャケット裏より)
 世界で一番有名な口琴奏者は誰?答えはもちろん、スヌーピー。その記念すべきデビューがこの映画だ。スペリングのコンテストで苦戦するチャーリー ブラウンを、そっとやさしくサポートするのが、スヌーピーの口琴演奏。おかげで、チャーリー、全校大会に優勝、全国大会に出場決定。
 「お守りに」とチャーリーに貸した、命よりも大切な毛布を取り返しに、会場へ向かうライナスとスヌーピー。バスの中では、スヌーピーが口琴を弾きまくり、ライナスをすっかり酔わせる。[8.]の「スヌーピーの大冒険」とは異なり、口琴は赤い色の物を使用している。
 スヌーピーに口琴を弾かせる発想は、オリジナルのコミックス版のどこかにあるのではないかと思われるが、そのコマはまだ見つからない。ご存知の方?<直川礼緒>
吉本興業株式会社 DA-0104

50.『スヌーピーとチャーリー・ブラウン ヨーロッパの旅』 ビル メレンデス / USA 1980
"Bon Voyage, Charlie Brown, adn Don't Come Back" Bill Melendez / USA 1980 [2015.6 up]
「スヌーピーとチャーリー・ブラウン ヨーロッパの旅」では、ピーナッツの仲間たちが初めて海外旅行に出かける。信じられないかもしれないけれど、チャーリー・ブラウン、ライナス、ペパーミント・パティ、マーシーたちが交換留学生に選ばれ、フランスで2週間を過ごすことになった。もちろん、スヌーピーやウッドストックもこのフランス旅行にお供する。チャーリーブラウンが行くところ必ず起こるいつもの大騒ぎに、今回はミステリーや陰謀やロマンスまで加わって、大冒険旅行が繰り広げられる。「スヌーピーとチャーリー・ブラウン ヨーロッパの旅」は漫画の面白さをそのまま再現してくれる楽しさだ。(VHSジャケット裏より)
 もう一作、口琴を演奏するスヌーピーがこれ。フランスへ向かう飛行機に乗るために訪れた空港で、灰色の口琴を弾きまくる。
 セキュリティの機械を通る際には、びよよ〜〜んと大きな効果音。すわ、口琴が金属探知機に引っかかったか、と思いきや、引っかかったのは首輪でした。では、口琴はどこに?スーツケースにちゃんとしまって預けたのか?あるいは、首輪に仕込んであったのか?はたまたゴミ箱に捨てたのか?いつもセキュリティを抜けるのに苦労する口琴奏者としては、気になるシーンだ。
 1作目の「スヌーピーとチャーリー」、続く「スヌーピーの大冒険」、そして本作と、どんどん口琴の重要度が低くなるのが残念。
 何故かDVD化されていないのは、交通事故をわざと起こして楽しむスヌーピーの運転姿勢が問題だからか?
 劇場公開版のもう一作「がんばれ!スヌーピー Race for Your Life, Charlie Brown」(1977)でも口琴が登場するかどうか、ご存知の方、教えてください。(なお、テレビ版では、一切口琴演奏はない模様。)情報:IS<直川礼緒>
CIC・ビクタービデオ株式会社 PKE 45003

51.『象使い』 チャートリーチャルーム ユコン / タイ 1987
"Khon Liang Chang (The Elephant Keeper)" Chatrichalerm Yukol / Thailand 1987 [2015.8 up]
ブンソンは象使い。子供の頃からずっと象と一緒に暮らしてきた。彼の仕事は伐採された材木を象の背に乗せて運ぶことだが、ある日、材木会社から解雇されてしまう。象は不要になるが、小さいときから一緒に育ってきた家族同然の象を、ブンソンはどうしても手放すこtができない。しかし、象を養っていくにはお金がかかる。それに、以前、病気になった象の薬を買うため華僑のホックから借りた金も、高利で膨れ上がっている、ホックは実は、違法な森林伐採に関与していた。借金のため、そして象を養うため、ブンソンはやむをえず違法伐採された国有林を運ぶ仕事をすることになる。
一方、森林警備隊の隊長カムロンは、使命感に燃えて違法伐採を取り締まっていた、しかし、地元の警察はホックに買収されており、カムロンの熱意もなかなか実を結ばない。ブンソンは以前カムロンを助けたことがあり、それ以来、2人は友情で結ばれていた。それだけに、ブンソンは違法伐採の片棒を担ぐのが辛くてたまらない。そしてあるとき、ホック一味が雇った殺し屋に、カムロンが殺されてしまう……。(環太平洋映画祭'90 パンフより)
 主人公ブンソン(ソーラポン チャートリー)が、象の背に揺られながらやってくる。竹の口琴を弾きながらの登場である。残念ながら音は無し。しかも、唇にくわえる楽器の位置が少々おかしい。せっかくタイからのエントリーだが、ちょっと惜しい口琴映画。
 この映画に登場する象使いたちは、何民族イメージしているのだろうか。口琴の形状は、ラオ族のもののようだが…。監督は、タイの王族。そして、口琴を演奏する主役は、タイのスター俳優だ。いろんな意味でもったいない。情報:MT<直川礼緒>
Mangpong Co. MPI DVD-5

52.『マフィオーソ』 アルベルト ラットゥアーダ / イタリア 1962
"Mafioso" Alberto Lattuada / Italy 1962 [2015.9 up]
アルベルト ラットゥアーダ監督の、ブラック コメディの秀作。自動車工場の主任ニーノ(アルベルト ソルディ)は、上品で現代的な妻(ノルマ ベンゲル)と二人のブロンドの娘を、実家訪問のため、産業都市ミラノから、時代遅れの田舎シチリアに連れて行く。
そこで彼は、彼のルーツを再確認することとなる。しかしながら、ニーノは、彼の祖先と、彼自身に関する、過酷な事実を発見したとき、予想した以上の物を受け取ることとなる。
壊滅的な滑稽さと、非感傷性をあわせもつ、ラットゥアーダの豊かな人間観察には、文化衝突によるコメディと、実存する悪夢が等しく共存する。
翻訳Lev Pryamorekov>
 故郷シチリアの村に帰ってきて、久々の父母や妹、親戚たちとの再会。昼食中、うれしくなって、声を張り上げて歌いだすニーノ。すかさず口琴で伴奏する親戚の(?)男。弾く方の右手は、招き猫の様に曲げ、人差指の第二関節で弾く。サハとシチリアに見られる、特徴的な演奏法だ。このようなスタイルは、楽器の大きさ、弁の硬さなどと関係していると思われる。同じく1962年のイタリア映画「シシリーの黒い霧」[15]同様、マフィアと口琴を関係付けた、ごく初期の一作。
 ほんの数秒の口琴演奏シーンだが、この人、明らかに口琴は弾けない模様。まず、楽器の保持が心もとない。また、口角に口琴の弁が当たってしまっているので、これでは音が出ない。しかも右手は弁の先を横に引っ張っているため、楽器がぐらぐら揺れている。少々残念、でも、楽器はよく見えるので、よしとするか(音は間違いなく別録り)。
 主役のアルベルト ソルディをはじめとする、「シチリア人」たちの大げさな演技は、確かにコミカルだが、ストーリイは「ブラック コメディ」では済まないほど。かなりブラックだ。
 2008年にアメリカで、特典画像満載で発行されたDVD。イラストを描いたのは、木村桂子。<直川礼緒>
Criterion Collection 424

53.『嫁』 ホジャクリ ナルリエフ / ソ連、トルクメン社会主義共和国 1972
"Nevestka (Daughter-in-Law / Gelin)" Khodzha Kuli Narliev / USSR, Turkmen SSR 1972 [2015.10 up]
物語は、脚本のナルリエフ兄弟が実際に目にした、事実に基づく。砂漠の宿営地に、二人の人物が暮らしている。年老いた羊飼いと、その息子の妻である。彼女の夫は、前線で死亡したが、彼女はその死を受け入れられず、夫を待ち続ける…。翻訳Lev Pryamorekov>
 トルクメンの砂漠に暮らす遊牧民の生活が、淡々と描かれる。年老いた義父につくし、日常の仕事に追われる嫁オグリケイイク(マヤ アイメドヴァ)。仕事に疲れ、ブッシュに一人赴き、口琴を奏でる。美しいメロディが流れ、目の前に、夢の世界が広がる。死んだはずの夫の帰還、豊かに暮らす人々…。目上の男性には、直接口も聞けない、トルクメンの女性。それが風習とはいえ、かなり厳しい。
 楽器としては、他に、2弦の撥弦楽器ドタールの演奏シーンもある。<直川礼緒>
Turkmenfilm

54.『我が名は道化師』 ラージ カプール / インド 1970
"Mera Naam Joker (My Name is Joker)" Raj Kapoor / India 1970 [2016.2 up]
ラージ カプールの最高傑作、自身の悲しみを犠牲にしても観衆を笑わせなければならない、ある道化師の一生の物語。ラジュー(ラージ カプール)は、母の意に反して、父の足跡を追い、世界を楽しませる道に入った、不朽の道化師。サーカスの世界で、最も愛される道化師となる旅の途中で、彼は、三人の美しい女性を愛する。が、その結末は、一介の純朴な男の立ち入る余地のない、彼女たちの野心や成功欲によって、惨めな結末に終わったのだった。人生がどのような試練を与えようとも、「ショーは続けなければならない」、サーカスの世界の物語。(DVDジャケット裏より。翻訳Lev Pryamorekov)
 三つ目の恋。街の不良少年、実は美しい踊り子、ミーナーと、大道芸を始めるラジュー。だんだん成功を収め初め、有名な劇場にスカウトされる。マドラスでの公演で、踊るミーナー。ラジューは、歌手の扮装をし、ムリダンガム、タヴィル、ナーガスワラーム2本、タンプーラなどを引き連れ、伴奏。クライマックスで、金属口琴を演奏する。ただし、楽器の保持の仕方は不自然(口琴の「尾部」を持っている)、形だけの「演奏」だが、顔を振り、熱演ぽくみせている。音は、映像に登場しないオーケストラやバイオリンと同じで、ちゃんとした奏者による別録音。
 この公演を見に来ていた、大俳優ラジェンドラ クマールにスカウトされ、ミーナーは映画女優の道を歩き始める…。
 少年時代のラジュー(リシ カプール、ラージの次男)は、ハーモニカが上手。ロシアンサーカスの「ロシア人」団員による群衆バックダンスが、何とも言えずゆるくてユニーク。情報:TA<直川礼緒>
Shemaroo SHEDVD 002

55.『キリング・ボックス』 ジョージ ヒッケンルーパー / USA 1993
"The Killing Box (Ghost Brigade / Grey Knight)"George Hickenlooper / USA 1993 [2016.3 up]
北軍を襲うゾンビ軍団の恐怖!
恐怖と殺戮に彩られたホラー・ウエスタンの傑作!

南北戦争さなかのアメリカ。北軍のハーリング大尉は無残な姿態が大量に放置された妖気漂う現場に遭遇した。ハーリングは、そこに残されたアラバマ51連隊の刻章の付いたバックルに不審を抱いた。やがて彼はこの惨殺事件の調査をハワース将軍に命じられ、上官のサルマン大佐、関係者である南軍のストレイン大尉、黒人奴隷レベッカらと共に旅立つ。そこでハーリングは身の毛もよだつ光景に出くわす。宗教儀式のような殺人、ミステリアスな女性レベッカ、極限状態に追い込まれた人間の狂気、疲弊した兵士たちの間に起こる動揺…。「メジャーリーグ2」のコービン・バーンセン、「運命の引き金」のシンダ・ウィリアムス、「地獄の黙示録」のマーティン・シーン共演の異色ホラー・ウエスタン。(VHSジャケット裏より)
 ハーリング大尉が属する北軍部隊の兵士の一人が、金属口琴を演奏。アメリカ製にしては、作りが丁寧な感じの楽器である。左利きで、人さし指の先を使い、往復打撃を時折交えながらの演奏。ゾンビ探しの旅に出かける時も、うっすらと音が流れているので、隊に加わった兵士ではないかと思われるが、その後の演奏シーンはないので、はっきりしない。
 太鼓(進軍太鼓とアフリカの太鼓)、アコーディオン、など楽器がいろいろと使われている。ゾンビは皆口笛が上手だし、中の一人(一匹?)は、苦手な設定のはずの銀色のハーモニカも吹く(銀ではないからOKなのかも)。
 現実問題として、南北戦争に参加した両軍の兵士たちの愛用楽器のひとつが、口琴であったのは事実。
 アフリカからやってきた魔物に取りつかれてゾンビ化した、不死身の南軍の兵士たちは、人間くささが強すぎで、あまり怖くない。何がしたいのかもよくわからない。おかげで怖がらずに見られました。どうして英語タイトルが3種類もあるのかも謎です。情報:T<直川礼緒>
Tristar Home Video CVT-14985

56.『天菩薩』 嚴 浩 / 香港・中国 1986
"Buddha's Lock" Yim Ho / Hong Kong & China 1986 [2016.5 up]
香港ニューウェイブの実力派が描く衝撃のストーリー!

1945年春。中国奥地に抗日戦を支援する米軍機が墜落した。パイロットを捜索するため、ジェームズ・ウッド将校がこの地に入った。しかし、まだ奴隷制度が残っている部族に、西洋人の珍しい奴隷として連れ去られてしまう。脱走も不可能な厳しい地で彼は10年間、奴隷として生きることになる。その間、ニウニウという若く美しい女性と恋に落ち、一緒に暮らすようになった。1956年、解放軍がこの地にも入ってきて、彼はスパイ容疑のため国外退去を命じられた。かつては早くアメリカに帰りたかった気持ちも、今では中国に残ってニウニウと暮らしたいと切に思うようになっていた。自分の意志とは逆の生き方を強いられてきたジェームズ・ウッドは、またも大きな悲しみを抱いて運命のいたずらに従わざるを得なかった……。(DVDジャケット裏より)
 奴隷つながり。彝族の若く美しい奴隷ニウニウと、「珍しい」西洋人の奴隷ラティエ(実はジェームズ ウッド)の恋の場面で。ニウニウ(張路[丹+彡])が、竹の2片口琴を演奏しながら、待ち合わせの(?)場所にやってくる。哀切な調べ。美しい彫刻の施された竹のケースに紐でつながっており、この一連のシーンでは、ニウニウはケースをずっと左手に持っている。
 せっかくの理想的な口琴演奏シーンだが、突っ込みどころも。映っているのは2片だが、聞こえてくる音は、1片のもの。口への当て方が現実感が乏しい(実際に演奏しているように見えない)など。
 演奏シーンはここ一箇所のみだが、音だけのシーンはほかにも、ニウニウの登場場面(ひとめ惚れ!)など、「ニウニウ愛のテーマ(?)」として、随所に盛り込まれている。
 主人公のジェームズは、彝族の銀を狙って山地入りをもくろみ、ニウニウがいながら主人の娘にちょっかいを出すなど、とんでもない(人間的な?)米兵である。
 牛を屠殺する場面での月琴演奏、シャマニズム儀礼の太鼓などの楽器に限らず、盟神探湯、部族間戦争、首狩りなど、彝族の古い風習を描いていて興味深い。情報:F<直川礼緒>
メディコス・エンタテインメント LCDV71106

57.『セミョン デジニョフ』 ニコライ グサーロフ / ロシア 1983
"Semen Dezhnev" Nikolai Gusarov / Russia 1983 [2016.7 up]
シベリアに新天地を開発した、17世紀の偉大な旅行家、セミョン デジニョフを主人公とする歴史・伝記映画。数々の困難を克服し、彼は「石の帯」(ウラル山脈)からアジア大陸の東端(現・デジニョフ岬)に至る、広大な土地を踏破。後にベーリングによって海峡であることが発見された、北アメリカとアジアの境界に、その80年前に到達した。極東とシベリアにおける勇敢な探検家の業績への尊敬の念を込めて語られるストーリイ。(DVDジャケット裏より)
 アジアの東の端の岬にその名を残すセミョン デジニョーフ(デジニョフ)、奥さんはサハ人のアバカヤダという。
 ヤクーツクの砦の場面で、サハ人の探検隊員サヘイが、金属口琴を演奏する。ただそれだけのシーン。階段の下に腰掛け、毛皮の帽子をかぶっている。楽器の保持の仕方、弾き方はサハだが、音はあまりホムスらしくない。サヘイを演じるのは、キルギスの俳優ボロット ベイシェナリエフ。<直川礼緒>
no number

58.『浮かれ姫君』 W. S. ヴァン ダイク / USA 1935
"Naughty Marietta" W. S. Van Dyke / USA 1935 [2016.10 up]
ルイ王朝華やかし頃のパリが舞台。伯父の勧める大公爵との結婚を嫌った公爵令嬢のマリィは、下女のマリエッタになりすまし、移民団に交じって船出してしまう。途中で海賊に襲われるが、ウォリントン大尉の率いる傭兵の一団に救われ、2人は恋に落ちるのだった。40年代にかけて8本の作品で共演したマクドナルドとネルソン・エディの初コンビ作で、アカデミー賞録音賞を受賞した他、作品賞でノミネートされた。2003年には、アメリカ国立フィルム保存法に基づきこの作品が新規登録されている。(DVDジャケット裏より)
 前回の「セミョン デジニョフ」とは「毛皮の帽子をかぶった口琴奏者」つながりで。
 主人公の「浮かれ姫君」、お転婆なマリィたちを海賊の手から救い出す、18世紀半ばのフランス領ルイジアナの傭兵の一団。焚き火を囲んだキャンプで、3人の傭兵が演奏。ジャグ(空き瓶を吹く)、オカリナ、そして口琴のトリオだ。曲は「The Owl & The Bobcat(フクロウとオオヤマネコ)」。残念ながら、口琴の音は全く聞こえない。マリエッタ(実はマリィ)と恋に落ちる、ウォリントン大尉がリードヴォーカルを自慢げに披露する。<直川礼緒>
ジュネス企画 JVD-3356

59.『餘生 セデック・バレの真実』 湯 湘竹 / 台湾 2012
"Pusu Qhuni" Tang Hsiang-Chu / Taiwan 2012 [2016.12 up]
『セデック・バレ』で描かれた抗日暴動事件――霧社事件。本作は、その被害者・加害者それぞれの遺族への丹念な取材と、歴史学者へのインタビューを通じて事件の真の姿を浮き彫りにしたドキュメンタリー映画である。また、セデック族発祥の地とされる"プスクフニ"を目指す親子の旅路も記録。その映像は、物静かな語り口の中にも台湾原住民の過去・現在・未来を繋ぐ民族としての信念と、連綿と繰り返されてきた力強い生命の営みを感じさせる。
監督は、『セデック・バレ』のスタッフの一員であるタン・シャンジュー。『セデック・バレ』『海角七号/君想う、国境の南』のウェイ・ダーションがプロデューサーを務めている。(DVDジャケット裏より)
 前回の「浮かれ姫君」とは、「1930年代の口琴演奏映像」つながりで。
 霧社事件記念公園で、観光客に事件の解説をする、オビン タダオ(高山初子)の孫、タダオ ナウイ。事件の中心人物モーナ ルダオのモノクロ写真に続いて、多弁口琴を演奏する、顔に入れ墨を入れた女性が登場。続いて、事件当時のニュース映像も挿入される。
 楽器の表皮側を口に当て、回転させながら演奏しているのがはっきりわかる。残念ながら、音は入っていないが、当時の口琴演奏の貴重な映像記録である。<直川礼緒>
マクサム MX-558S

60.『小名木川物語』 大西 みつぐ / 日本 2017
"Onagigawa Monogatari" Onishi Mitsugu / Japan 2017 [2017.5 up]
東京・深川
まっすぐな暮らし、昨日、今日、明日
まちから立ち上がる
新しいローカルムービー

深川の町工場の息子の進は、10年ぶりに深川に帰ってきた。
喪失感を抱え、悲しい記憶もある故郷。
進は深川のまちを彷徨する。まちの人々との再会、そして美術家の紀子との出会い。
進は一度は捨てた深川のまちを愛するようになっていく.・・・。(チラシより)
 いわきから深川に帰ってきた、喪失感の塊のような青年、進(徳久ウィリアム)。何故か喉歌や口琴ができ、句会にも顔を出す。北砂の妙久寺の、石田波郷の句碑の前で、口琴を演奏。
はこべらや 焦土の色の 雀ども  波郷     <直川礼緒>
映画公式サイト http://onagigawa.com/

61.『海獣の子供』 渡辺 歩 / 日本 2019
"Kaiju no Kodomo (Children of the Sea)" Watanabe Ayumu / Japan 2019 [2019.7 up]
光を放ちながら、地球の隅々から集う海の生物たち。巨大なザトウクジラは“ソング”を奏でながら海底へと消えていく。
<本番>に向けて、海のすべてが移動を始めた―――。
自分の気持ちを言葉にするのが苦手な中学生の琉花は、夏休み初日に部活でチームメイトと問題を起こしてしまう。母親と距離を置いていた彼女は、長い夏の間、学校でも家でも自らの居場所を失うことに。そんな琉花が、父が働いている水族館へと足を運び、両親との思い出の詰まった大水槽に佇んでいた時、目の前で魚たちと一緒に泳ぐ不思議な少年“海”とその兄“空”と出会う。
琉花の父は言った――「彼等は、ジュゴンに育てられたんだ。」
明るく純真無垢な“海”と何もかも見透かしたような怖さを秘めた“空”。琉花は彼らに導かれるように、それまで見たことのなかった不思議な世界に触れていく。三人の出会いをきっかけに、地球上では様々な現象が起こり始める。夜空から光り輝く彗星が海へと堕ちた後、海のすべての生き物たちが日本へ移動を始めた。そして、巨大なザトウクジラまでもが現れ、“ソング”とともに海の生き物たちに「祭りの<本番>が近い」ことを伝え始める。
“海と空”が超常現象と関係していると知り、彼等を利用しようとする者。そんな二人を守る海洋学者のジムやアングラード。それぞれの思惑が交錯する人間たちは、生命の謎を解き明かすことができるのか。
“海と空”はどこから来たのか、<本番>とは何か。
これは、琉花が触れた 生命 の物語。(チラシより)
 世界中をたった一人で航海する「海のなんでも屋」デデが、「風と会話する楽器」ムックリを演奏するシーンが2か所。五十嵐大介の原作(小学館IKKIKOMIX刊)には、デデがムックリを演奏するシーンは無く、原作をほぼ忠実になぞったこの映画作品に、どのような経緯でムックリシーンが加わったのか謎。
 挿入曲「星の歌」でも、竹製の口琴の音が鳴っている。クレジットされていないが、演奏は直川礼緒(夢を壊して申し訳ありません)。<直川礼緒>
映画公式サイト https://www.kaijunokodomo.com/

62.『ロリマドンナ戦争』 ]リチャード C サラフィアン / 1973
"Lolly-Madonna XXX" Richard C. Sarafian / USA 1973 [2019.12 up]
ナッシュビルに向かう途中、バスの乗り換えのために片田舎の停留所に降り立ったルーニー・ギル(シーズン・ヒューブリー)。いきなり彼女はピックアップトラックの二人組に拉致される。レイバン(ロッド・スタイガー)を課長とするフェザー家の仕業だった。フェザー家と隣接するガットシャル(ロバート・スタイガー)の一家は土地を巡って激しく対立していた。ルーニーをガットシャルの二男ルディの婚約者"ロリ・マドンナ"だと思い込み、土地と引き換えの人質にするため軟禁したフェザー家だったが、実はガットシャル家が偽の手紙でフェザー家の息子たちをおびき出すための罠だった。だが、何の関係もない娘がフェザー家にいると知ったガットシャルは良心の呵責から助け出そうと考え、開放するように申し入れるが、敵対するフェザー家は全く聞き入れない。やがて、ガットシャル家の末娘シスター・E(ジョーン・グッドフェロー)がフェザー家の息子たちに強姦されたことから、ついに隣り合う二つの家族は血で血を洗う全面戦争に突入する。
アメリカン・ニューシネマの雄。リチャード・C・サラフィアン監督が二大名優と、当時まだ若手俳優だったジェフ・ブリッジス、エド・ローターらを脇に固め、ケンタッキー州で実際に起こった事件をヒントに鮮烈に描いた傑作バイオレンス映画。
(DVDジャケット裏より)
 何とも救いようのない、隣接する二家族の争い。大物歌手を夢見るフェザー一家の三男ホーク(エド ローター)(肩に鷹の刺青をしている)が、口琴を演奏するシーンが2か所。割れんばかりの拍手に迎えられてステージに立ち(立っていることを夢想して)、口琴を演奏する。最後の方では、父親に殺された長兄スラッシュの墓穴に、胸ポケットから取り出した口琴を投げ入れる場面も(この時は演奏しない)。<直川礼緒>
ワーナー・ブラザース ホームエンタテインメント 1000647794